もっとも、公務員採用試験の場合、公平・公正であることが求められています。さらに、都庁の場合は、合否の結果だけでなく、受験生全員に具体的な得点も通知されます。
したがって、面接試験においても、それぞれの面接官が客観的な基準で評価できるよう、採点基準が設定されていると言えます。
つまり、試験を実施している人事委員会としては、仮に合否の理由を開示するよう求められたとしても、ちゃんと内外に説明できるような基準に基づいて、採点を行っているということです。
平成29年度東京都職員採用試験案内によると、<東京都の求める人材像>として以下の点を挙げています。
① 高い志と豊かな感性を持った人材
② 進取の気性に富み、自ら課題を見つけ、進んで行動する力を持った人材
③ 都民から信頼され、協力して仕事を進める力を持った人材
④ 困難な状況に立ち向かい、自ら道を切り開く力を持った人材
このままの基準で、各項目にあてはまる人物かどうか、1点~5点で採点することも可能ですが、具体的な能力等に落とし込むと、次のようになります。
1) 問題意識
2) チャレンジ精神
3) 課題設定力
4) 積極性・行動力
5) マナー・態度
6) チームワーク・協調性
7) 説得力
8) 課題解決力
「求める人材像」は、都庁が組織として公式に公表したものです。人事担当者がフィーリングで決めたものではありません。関係部署において様々な角度から検証した結果導かれた、今、都庁が欲しい人材のエッセンスです。
面接試験で高評価を得るためには、これらの項目について、面接官とのやり取りの中で、自分がそれらに該当する人材であることを、面接官に納得してもらう必要があります。
もっとも、面接官は、受験生が学生時代や前職で頑張ったこと自体を評価しているわけではありません。
面接官の視点は、あくまでも、都庁に入ってからの活躍が期待できる人材かどうかです。学生時代の取組をアピールする際には、相手の視点に配慮して、うまく提示することが大切です。
どんなに熱心に語っても、相手に意図が伝わらなければ、面接の場では評価につながりません。
例えば、サークルやアルバイトで頑張ったエピソードについて熱心に語ったとしても、「本業よりも趣味に熱を上げそうだ」と思われてしまっては逆効果です。
受験生のこれまでの「頑張り」を評価するわけではありません。視点は、「都庁に入ってからどんな職員になりそうか」です。
例えば、学生時代にラグビーで活躍した受験生がいるとします。実業団ラグビー部のある企業なら、採用後もラグビーに取り組んでもらうために、競技での実績そのものを評価して採用することもあるでしょう。しかし、都庁の場合は、当然ながら、スポーツの技術自体を活用できるわけではありません。
そのスポーツを通じて学んだこと、身に付けたことを、都庁の職場でどのように活用できるのか、受験生の側で整理しておく必要があります。また、「それだけのことを継続して成し遂げた人材なら、こういう望ましい特性を持っているはずだ。都庁の職場でもそれを活用できるだろう」と、面接官に自然に伝わるよう、話題の切り口も工夫すべきです。
以上はスポーツを例に取り上げましたが、学校の勉強、ゼミ、サークル、アルバイトでも同様です。その経験の素晴らしさ、あるいは大変さ、ひいては就職後の職務にどのように活用・応用できるかについて、面接官が自然に気づいてくれるとは限りません。
また、都庁受験生が当日持参する面接シートにも、「あなたがこれまで力を入れて取り組んだことについて、取組期間も含めて書いてください」とあります。(平成28年度1類Bのケース)
「力を入れて取り組んだこと」とあるように、何ごとも他人に指示されるまま漠然と取り組むタイプは想定していない、という人事当局からのメッセージでもあります。
スポーツで目覚ましい業績を上げたとしても、単にコーチの指示に従った結果であれば、都の求める人材としては不足です。
面接シートの記載内容を鵜呑みにしてくれるわけではありませんが、仕事でも活かせる専門知識や能力、仕事に応用できる経験等について、面接官がその線で検証したいと思えるように工夫して記載する必要があります。(面接時間が制限されている中でも、話題として確実に取り上げてもらえるようにです)
既にこれだけのことができる人材なら、入都後も職場で同じように活躍できるだろう、これまで以上の努力を続けられるだろう、と面接官に納得してもらうことが、面接に臨む受験生の最終目的です。
これまでの頑張りや成果そのものを評価し、その褒賞として合格を与えるわけではないこと、また、受験生の主張を鵜呑みにするつもりはなく、どう受け止めるかは面接官に委ねられている、という点を押さえておけば、大きな戦略ミスは避けられます。
なお、面接シートで、「仕事でも活かせる」「即戦力として活躍できる」と受験生のほうからストレートに記載することは意味がありません。これは面接官が総合的に判断することです。受験生の立場では、判断材料の提供に留めるべきです。
判断材料の提供にあたっては、面接官が何を検証したいのか踏まえた上で、適切な事例を適切な切り口で提示することが重要となります。
こうした相手の視点を意識して準備を行い、当日の受け答えの際にも留意すれば、何となく自己PRという感覚で面接に臨むのと比べて、合格確率が1段階、2段階は上がるはずです。
先に紹介した都が求める人材像の具体的な能力等については、別記事で改めて解説したいと思います。
通年学習から直前期対策までを見据えた