都庁採用試験の順位とキャリアパス

来年度から都庁の一員となるために、まずは合格ラインを超えることが最初の関門です。そして、可能な限り、高い順位での合格を狙ってほしいと思います。

これは必ずしもトップクラス、上位合格という意味ではありません。300位よりは200位、200位よりは100位ということです。

当ブログの記事『都庁面接試験の難易度』で紹介したとおり、下位ほど人数が多く、わずかな得点差で受験生がひしめく構造となっています。ちょっとした考え方の視点、心掛けを身に付けるだけでも、大きく順位を上げることが可能です。

何のために合格順位を上げる必要があるのか。

確かに、人事当局が発表しているとおり、最初の配属局、配属先については、合格順位と直接関係はありません。当局は東京都職員採用サイトで以下のとおり述べています。

「配属局や配属先は、採用候補者名簿の順位に関係なく、本人の希望や適性をふまえ、業務の必要性や各局の状況等を考慮して決定しています。」

最初の配属先については、順位が高い順に有力な部署に配属する、本庁に配属するということはありません。また、その後も、単に合格順位が高かったというだけで、昇進、人事異動で優遇されることもありません。

昇進、異動は配属先での働きぶりや成果に基づいて決まります。採用後、まずは同じスタートラインに立つという意味ではその通りです。つまり、制度上は、上位合格だからアドバンテージがあるわけでも、下位合格だから挽回が必要というわけでもありません。

もっとも、入都の段階で、合格順位が完全にチャラになるわけでもないのです。影響を及ぼすものは主に2点あります。

まずは、本人の意識です。

研修では、プレゼンやグループワークも頻繁に行われます。こうした場面で、自信を持って意見を表明したり、グループワークをリードしたりすることで、自然と、本人の意識でも、周りの評判でも、将来を担う人材というイメージが徐々に生まれます。

もちろん、下位合格でも気にせず、堂々と自分の考えを述べればよいのですが、何となく本人が引いてしまうケースが多いと見受けられます。

そして、上位合格タイプの人材は、そういう役割を果たすべきと何となく自覚が生まれているのでしょうが、議論の取りまとめ役を務めたり、積極的に発表者役を引き受けるケースが多いようです。

こうした研修等での各職員の行動自体については、特に査定されているわけではありません。しかし、入都早々に、都庁組織の中での「自己像」の方向づけが始まってしまうということです。

上位での合格という実績が、入都当初の自信につながることは間違いありませんので、採用試験対策に時間を割くことができる範囲で、少しでも上位での合格を目指してほしいと思います。

実際に、新任研修で仲良くなった同期や、予備校に通っていて同期に知り合いが多い人を通じて、「アイツは何番だった」というのは、特に採用初年度はよく耳に入ってきます。

研修では、プレゼンやグループワークも頻繁に行われますが、そうした中で「彼はデキるな」と思わせる優秀な同期が目につくはずです。
そして、「彼は何番だった」という話が周囲から聞こえてくるでしょう。

そのときに、「自分と変わらない順位だ。自分ももっと頑張らないと」と考えるのか、「どうせ自分は下位合格だから、かなわないのはしょうがない」と考えるかで、1、2年もすれば仕事や自己研鑽の姿勢に大きな違いが生まれてきます。

もちろん、下位合格でも、それは採用試験が行われた時点での順位に過ぎません。入都までの間や入都後に急成長することは十分考えられます。

また、採用試験対策に割ける時間も個人差があります。下位合格だから能力的にも劣るとは言えません。部活等の都合で半年しか準備期間がなかった人もいれば、大学2年生のころから予備校に通って準備万端という人もいるでしょう。

ただ、入都最初の段階で、下位合格だからと自ら卑下したり、優秀そうに見える同期に囲まれて雰囲気にのまれてしまうことがないよう注意が必要です。自分の可能性を閉ざしてしまいかねません。


もう一つは、当局の見る目です。

合格順位については、配属される職場の同僚みんなが知っているわけではありませんが、人事や配属先のしかるべき役職者、担当者は把握しています。それを知っている職員の内心で、どうしてもそういう目で見てしまうのは、ある程度は避けられません。

繰り返しになりますが、上位合格というだけで、制度上、優遇されることはありません。一方、下位合格でも、仕事での成果を通じて、「合格順位を知っている人」を驚かせることは十分可能です。

なお、数十年前の都庁では、合格者の上位50名程度だけを集めて、「将来の幹部としてのポジションは保証するから、ぜひ都庁に来てほしい」と勧誘が行われていたようです。(当時の対象者から聞いた話です)
現在では、そのような特別扱いは全くありません。

以上に述べたように、合格順位による制度上の違いはありませんが、それでも実質的に影響を及ぼすことはあります。

合格すれば何でもよいというのではなく、将来、都庁でどんな仕事ができるのかまで考えるのであれば、少しでも高い順位での合格を目指してください。

都庁の採用区分は、幹部候補とその他といった仕分けはありません。政策立案や事業を統括する仕事に携わるチャンスは、入都した全員に開かれています。一方で、そうした機会が保証されている(順番に回ってくる)わけではありません。

上位で合格することができれば、本人の意識に関しても、周りの見る目に関しても、損をすることはありません。

上位合格者の中でも、順位が上がるに従って、実質的な注目度は高くなります。これが励みになるか、プレッシャーと感じるかは人それぞれかもしれませんが。


これから面接試験に臨む方は、まずは合格水準を確保することが大切です。そして、都庁対策に割くことができる可能な範囲で、さらに上位での合格を狙ってください。

教養択一、専門記述までは学校の勉強の延長で対策が可能ですが、論文試験、面接試験は職業人としての基礎力を見極めるための試験です。勉強ができる人が高評価を受けるわけではありません。

逆に、勉強はそれほど得意でなくても、実務能力が高く、都庁の若手職員として活躍が期待できる人材と評価されれば、逆転のチャンスが大いにあります。

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