公務員は「おいしい職業」であり続けるのか

都庁でバリバリ働きたいという方には、将来は、現行制度以上の職務権限、待遇が若くして可能となりそうです。

一方で、程ほどの待遇を求めている人にはどうでしょうか。公務員は「おいしい職業」であり続けるでしょうか。

また、就職したらもちろん頑張るつもりだが、万一の保険のため、昇進等がうまくいかなかった場合のことも考えておきたい方もいると思います。

国や都の人事当局が打ち出している方針と、職務給制度が採用されている欧米での状況を考えると、将来想定される人事・給与制度は以下のようなものです。

・ 役職(職責)が上がらないと、給料は頭打ち
・ 民間と比べれば、やはりクビにはなりにくい
・ 職員間の給与差は拡大するが、ある程度の
  給与水準は保証される
  (いわゆるブラック企業のようなことはない)
・ 全員が出世競争に参加するわけでなく、
  昇進の難易度はそれほど高くはない

簡潔に表すと、公務員の待遇は「ロー・リスク、ミドル・リターン」から、「ミドル・リスク、ミドル・リターン」へと変わっていきます。

もっとも、これは財政基盤がしっかりした自治体の場合です。財政的な問題を抱える自治体の場合は、「ミドル(ハイ)・リスク、ロー・リターン」である可能性もあります。

これからの給与制度は、基本的に、役職に就いていないベテラン職員の給与はマイナスです。

もっとも、現在の給与水準を前提に生活設計、将来設計をしている職員も大勢いますので、激変緩和措置として、毎年の改定はわずかなものです。

ただ、毎年の減額が1%、2%でも、10年、20年と積み重なれば、昔の水準とはずいぶん変わったと分かる給与額になるはずです。
例えば、現在年収700万円のベテラン職員層で、給与水準が20%切り下がると、年収560万円となります。これは若手職員より少し多いという程度の収入です。

一方、若手職員の給与は基本的にプラスの流れです。
今後は、少しでも質の高い仕事をしようという意欲があり、新しいことも勉強して頑張れるタイプの人材は、現行制度に比べ、若いうちから高待遇を得られるようになります。

ただし、財政的に、また政治的に、職員の給与総額は増やせません。このため、ベテランの給与減額も、若手職員の給与増額も、同じペースで徐々に進むでしょう。


出世に関しては、都庁の管理職の割合は全体の10%弱です。これからは職責に応じた待遇差が拡大するにつれて、管理職を目指す職員が増え、競争も現状よりは激しくなると予想されます。

一方、管理職ポストを増やすことはできません。どちらかと言うと、整理縮小する方向です。

頑張れば誰でも管理職になれるとは言えませんが、ある程度の収入を期待する場合は、少なくとも「課長代理級」(従来の課長補佐・係長級)まで到達しないと、現在の都庁職員でイメージされている給与水準には到達しないでしょう。

現行では、「課長代理級」に相当する職員の割合は、全体の3割です。

主任試験に早めに合格することができれば、ここまで到達するのは難しくありません。

現行制度では、主任に昇格後、(管理職試験Aに合格しなくても)5年間を勤務成績良好で経過すれば、課長代理級(従来の係長級)に昇格できます。

それほど出世したいわけではないというケースでも、「課長代理級」まで昇進していれば、現在のベテラン職員がもらっている給与水準には、いずれ達するでしょう。

逆に、「課長代理級」に達していないと、これから就職する方が40代、50代になったときに、「都庁に入ればこれくらいは」と期待していた収入にはおそらく届きません。

現時点で受験生の方がイメージしている「都庁らしい収入」を得るには、入都後、まずは主任試験に早く合格することです。

若手のうちから「出世なんて興味ない」と競争から離脱してしまうと、収入(退職金、年金も含めて)の将来性も厳しいものとなる可能性があります。

今後も、都庁は安定した就職先であり続けると考えていますが、中長期的には、入ってしまえば一生安泰の「おいしい職業」とまでは言えなくなりそうです。つまり、個人差が大きくなります。

目安としては、「課長代理級」以上への昇進が見えて、本庁業務など、行政の中核部門での実務経験が豊富になれば、ようやく長い目で見ても安泰と言いますか、「公務員らしい」それなりの収入、安定した身分が今後もほぼ保証されるだろうと言えます。

「中核部門での実務経験」と述べましたが、これは将来、万一、財政難に直面した際に、非中核部門が民間委託、民営化等により本体から切り離される可能性を考慮してです。

将来の給与制度の完成形を考えると、職員間の待遇差が大きすぎるため、総合職、一般職のように、いずれは採用区分を分けるようになるのではないでしょうか。(試験による一括採用を維持する場合)

政策の立案や政策実施を統括する職務に携わり、出世も可能、ただし都内のどこで勤務するか分からず、本庁勤務の際にはそれなりの残業もある総合職。そして、勤務エリア限定で、定型的な事務に携わる一般職。

現在でも、入都後の勤務成績や本人の意向で、実質的にはこうした役割に分かれていきます。

もっとも、今の40代、50代の職員は、「一般職」的な職務に携わっていても、それなりの「公務員らしい給与」をもらっていますが、これから入る方が40代、50代になる頃には、現在と同水準の給与はもらえなくなる可能性が極めて高いです。

これから就職される方は、その点を認識してキャリアパスの選択、働き方の選択をしなければいけません。

一方、心身を壊すほど働いても手取り月20万円程度、ボーナスもなしというのが当たり前の業界もあります。

「それほどの苦労もせずに、クビになりにくく、年500万円もらえるならそれで十分」ということであれば、諸外国の例を見ても、将来の都庁でもその水準は(ほとんど出世しなかった場合でも)概ね保証されていると考えられます。

将来は、都庁に入りさえすれば、誰でもいつかは高い給与がもらえるようになるという「おいしさ」はなくなりそうです。

それでも、生活に困ることはない給与水準が保証されていながら、消耗品のように扱われるリスクも少なく、意欲次第で上も狙えるという点では、やはり安定した「良い就職先」と言えるでしょう。


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