平成27年度の都庁採用日程の見直しにあたり、人事当局は、
「理系大学院生の人材獲得競争の激化も見込まれることから、早期に大学院生を確保するため、試験の実施順序を見直し、1類A試験から開始する」
と表明していました。
「理系大学院生の人材獲得競争の激化も見込まれることから、早期に大学院生を確保するため、試験の実施順序を見直し、1類A試験から開始する」
と表明していました。
東京五輪開催に備えたインフラ整備事業も見据え、理系人材の確保、とりわけ高度な専門性を身に付けた大学院生の確保が第一命題となっています。
近年の採用試験の競争倍率を見ても、行政職に比べ、技術系の区分は全般にかなり低い状況です。
これは他の自治体でも同様ですが、採用を活発化しているゼネコンなどに理系人材が流れ、そもそも公務員試験を受験してもらえない、合格しても内定を辞退されるというケースが増えています。
(もっとも、景気が比較的良い時期には、公務員の人気が下がるのは昔から同じです。景気の波に応じて、いずれは状況が変わるでしょう)
(もっとも、景気が比較的良い時期には、公務員の人気が下がるのは昔から同じです。景気の波に応じて、いずれは状況が変わるでしょう)
学生の側でも、どんな仕事を任せてもらえるのか、組織や仕事の将来性、昇進や昇給の可能性などを総合的に判断して、就職候補先を選んでいます。
単にPRを強化して、大勢の学生に受験してほしいと言うだけでは、本質的な解決には近づきません。
都庁では、院卒者対象の1類Aの場合、主任試験までの期間や初任給に関して、1類Bと比べて配慮はされていますが、優遇まではされてはいません。
初任給で見ると、「1類A 1級37号」「1 類B 1級29号」です。
8号給の違いということは、1類Bで入って2年間「標準」の勤務成績だった職員と同等の扱いということです。
確かに、1類Bで入った職員とのバランスで、都庁での2年間の職務経験と、大学院での2年間の修学をどう評価するか難しいところではあります。
しかし、「ぜひとも獲得したい人材」と言いながら、既存職員の「標準」と同等の扱いでいいのでしょうか。
現状では、都庁に就職したいと決めている学生の場合、学費を払うことも考えれば、大学院に行くよりも学部卒で入都したほうが経済的には得だという状況です。
人事当局が本当に理系大学院生を確保したいなら、組織として大事にしているという姿勢を制度や仕組みでも示さないと難しいのではないでしょうか。
「一般枠とは違うステージを用意して待っている」という姿勢の他の組織に、人材を取られても仕方ありません。
なお、中央省庁の初任給は「総合職(院卒) 2級11号」「総合職(大卒) 2級 1号」と10号俸の違いですから、標準の勤務成績(年4号俸昇給)で2年間経過した大卒の職員よりは上の処遇になっています。
都庁1類Aの処遇のアイディアとして、最初の配属先は必ず本庁、主任試験の筆記を一部免除、初任給を1類Bで入都し「上位」評価を受けている職員の水準に合わせる、などが考えられます。
特に、1類Aの最初の配属先を本庁とするのは、同年代職員と比べたキャリアパスの面で、妥当な線だと思います。1類Bで2年先に入った職員は、3年目を迎えて出先から本庁に異動し始める時期ですから。
確かに現場を経験していたほうが本庁業務でも役に立つ側面はありますが、現場を知ることに強みがある職員、高度な専門知識に強みがある職員と、多様性があってもよいと思うのです。
出先配属になる可能性があるから、何の業務担当になるか分からないからと、都庁を避ける公務員志望者もいるようです。本庁で専門知識を活かせる部署に配属と決めてしまえば、志望にあたっての障害が一つ軽減するでしょう。
こうなれば1類Bよりも1類Aのほうが受験生に人気になるかもしれません。
1類Aの処遇として、主任昇任までの期間短縮という手も考えられますが、そこまで優遇してしまうと、学歴差別ではないかという話にもなるので難しい側面があります。
もっとも、以前の採用区分では、旧2類(短大卒資格)で入った職員が旧1類(大卒及び院卒)扱いになる「能力認定」の制度がありました。都庁に入ってから能力認定試験に受かると、1類で入ったのと同等とみなされ、主任試験までの期間が短縮されるというものです。
1類Aの主任試験までの期間を現状より短縮したうえで、他の区分で入った職員も、試験制度か、あるいは勤務成績によって、1類Aと同様の期間で主任試験を受験可能とすれば、実力本位の人事制度にもかなうでしょう。
1類Bで平均より高い年齢で都庁に入った方にとっても、頑張り次第でキャッチアップできることにもつながります。
また、理系人材のキャリアパスの可能性に関して、最高幹部への登用も課題として挙げられます。
都庁の現状では、技術職の場合、局長にはなれますが、副知事にはなれません。
一応、技術職のトップとして、「都技監」という(名目上)副知事に準ずるポストが設けられていますが、たいてい局長職と兼務ですし、序列は事務系出身の副知事(3名)の下位の扱いです。
副知事の一人を技術職として、都市整備局、環境局、建設局、港湾局、水道局、下水道局など技術系分野と深く関わる局を統括するのも良いのではないでしょうか。(せっかく副知事ポストが複数あるのですから)
中央省庁でも、技官が役人トップの事務次官を務めている省庁もあります。
もちろん全員が局長、副知事を目指すわけではありませんが、組織の体制として、道が開かれていることは大切だと思うのです。
もっとも、都の人事当局も、今後は「ゼネラリスト」だけでなく、「スペシャリスト」「プロフェッショナル」タイプでも上級幹部を目指せる「複線型人事制度」へと舵を切っていく方針を打ち出しています。
専門性を高めることが将来の昇進や昇給にも直結するようになれば、技術系職員のモチベーションになると思います。(この点は、行政職で、法律や会計など専門性で勝負したいという場合も同様です)
ひいては、都庁に職業人生を賭けてみようという理系学生もさらに増えるのではないでしょうか。
いずれはこの複線型人事制度の象徴として、技術系の副知事が誕生する日が来るかもしれません。
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