若手が多い自治体は残業が多い

以下の図は、『残業の多さランキング - 特別区・市(都内)』で対象とした54の自治体について、職員の平均年齢と残業時間をプロットしたものです。



自治体によって残業時間にバラつきはあるものの、傾向線(線形近似)を引くと、平均年齢が高くなるにしたがい残業時間が減少する傾向が表れています。

もっとも、この傾向は、公務員給与制度の理念に照らせば、実は正しい結果です。

公務員に毎年の定期昇給が与えられる根拠は、職歴を重ねることにより、職務能力が向上していると見做されることにあります。

職務能力が高ければ、より短時間で効率的に職務を完了できるはずであり、その分、残業時間も少なくなると想定されます。

したがって、上記の公務員給与制度の理念に則れば、平均年齢の高い自治体ほど残業時間が少ない傾向にあることも、自然な結果というわけです。
あくまでも、理念的にはです。

実際には、既に相当程度の経歴を積んだ職員がさらに1年の経験を積んだとしても、それほど明確に職務能力が向上しているとは考えられないでしょう。(特に、長年携わってきた職務内容をそのまま続けている場合)

一方、新規採用職員と2年目の職員を比べれば、職場での実務能力は格段に違いますので、能力の向上に応じて給料を上げるのであれば、若手職員は1万円と言わず、3万円、4万円くらい定期昇給で月給を上げてもよいくらいです。

理念的には、年齢が高くなれば職務能力が高まり、残業時間も少ないのだと言いたいところですが、全般的な役所の実情を考えると、そう言い切るのは気が咎めます。

組織文化や個人の意識にもよるので全員がそうではありませんが、全般的な傾向で言えば、結局は、経歴を重ね、場合によっては先が見えてくるうちに、仕事はほどほどで良いと考えるようになるケースが増えてくるのではないでしょうか。

組織にこうした風潮が蔓延しているようだと、職場に活気がなかったり、何でも若手職員に押し付けられたり、意欲を持って入ってきた若手職員にとって望ましい環境ではないかもしれません。

もちろん、出世や給料と関係なく、公務員としての使命感で仕事に打ち込んでいる方もいます。ただ、そうした理念だけで、全ての職員が長期にわたって仕事に邁進できるかというと、実際には難しいでしょう。

都庁でも、成果主義を反映した給与制度に徐々にシフトしています。(そういうわけで、都庁の面接では、公共のために奉仕したいという理念だけでは相手に響きません)

逆に、平均年齢が低い(若い職員が多い)自治体では、これから出世したい、有力部署に異動したいと考えている職員の割合が相対的に高いはずですので(また同年代のライバルも多い)、少しでも仕事の成果を上げようと、遅くまで残業する職員も多いのではないでしょうか。

新人にとっては、慌ただしいペースに付いていくのは大変かもしれませんが、職場には活気が感じられそうです。

もっとも、個別の自治体で見れば、業務の無駄を排除し、できるだけ残業を減らすように努めている自治体もあります。残業が少ないから仕事をしていないとは限りません。正規の勤務時間中に非常に密度の濃い仕事をしているところもあるでしょう。

また、現在は平均年齢が高い自治体でも、首長のリーダーシップの下、(ベテラン職員には気の毒ですが)次世代を見据えて中堅・若手職員を重用している自治体もあります。

自分の志望している自治体が職員構成や残業時間で気になる特徴がある場合、事前に懸念事項をマークしておき、本当に何か問題があるのか、それとも杞憂にすぎないのか、職員から話を聞ける際などに確認するとよいでしょう。

単に「残業は多いのでしょうか」と質問するよりも、他の周辺の自治体と比べたデータを把握した上で質問したほうが、より深い回答を引き出せるはずです。

ある自治体の残業が少ないのは、職員の意欲が乏しいことが原因か、それとも効率的に業務を行っていることが原因か。どちらの自治体を選ぶかで、これから就職する方の職業人生は、かなり違ったものになるはずです。

この点は、その自治体でずっと留まる場合だけでなく、将来転職することになった場合にも影響します。
将来、転職する際には、最初の就職先としてなぜその自治体を選んだのか、その自治体でどのように働いてきたのかが必ず付いて回るからです。


早めの取組で差をつける、
都庁OBの受験対策シリーズ (amazon.co.jp)
都庁の「理解度」でライバルに差をつけるために
本当の都庁の姿、都庁の仕事、組織が職員に求めている本音を理解し、正しい方向で採用試験に向けた準備を進める


ミクロの視点で人物評価の根本に迫る面接対策
100の場面を通じて、実際の職場で優秀と評価されている都庁職員の習慣から学ぶ、面接で評価される人材の思考・行動様式