職員構成から占う、自治体の将来像

都内の自治体でも、それぞれの組織が抱える課題は異なります。どこに就職しても同じということはありません。

民間企業に就職する場合でも、金融業界ならどこでもいい、自動車業界ならどこでもいい、とはならないのと同様です。

平均年齢の高い自治体と低い自治体を例に見てみましょう。

平均年齢が高いケース
以下は、平均年齢の高い自治体の代表として、渋谷区(46.0歳)の職員構成です。


出典『渋谷区人事行政の運営等の状況について』

まず、年齢構成を見ると、非常に上に重い状態です。(区役所の職員構成は、渋谷の街のイメージとはずいぶん違います)

今後、区として職員の数を減らしたいという意向なら、今後20年は自然に減少していきそうです。

逆に、定年退職の補充をしないと人手が足りない状況であれば、新規採用数を大幅に増やす必要があります。ただし、特定の年齢層だけを増員すると、また数十年後に同じ問題に直面することになります。

もっとも、給料の高いベテラン職員が多いため、人件費負担が重く、若手の採用数を増やしたくても思うようにできないのかもしれません。5年前と比べても、若手の割合はそれほど増えていません。

また、ベテラン職員が一斉に退職していく際のノウハウ継承も課題となっているでしょう。

次に、級別の構成で見ると、組織の中間層の係長、主任が最も多く、やや上に重い組織となっています。

ただし、統括係長(課長補佐相当)以上はかなり絞られていますので、地方の自治体に見られるほど上に重い組織ではありません。

某県庁では、係長と課長補佐を合わせると、職員全体の5割を超えています。部下の数よりも上役のほうが多い状況で、若手職員は大変そうです。

当該県庁のこの職員構成は、5年前からほとんど変わっていませんので、自主的に変える意思はなさそうですが、最近、国(財務省)がこの問題に目を付けたため、これから半ば強制的に見直しが始まるでしょう。
今後、こうした状況の自治体では、職員の平均年収(ひいては生涯収入)は低下傾向になるはずです。

渋谷区の場合は、ベテラン層の引退とともに中間層が重い構成も適正化されていくと想定され、昇進・昇給のあり方について、国から切り込まれるということはないでしょう。

これから職員になる方にとっては、当面、年齢層が高いため、組織文化(社風)が何となく古く感じたり、雑用は何でも数少ない若手に回ってくるということがあるかもしれません。

一方、将来は、どんどん上が軽くなりますので、今の若手が中堅職員になる頃にはポストも回ってきやすいでしょう。

もっとも、定年退職の補充のため、いずれは若手を大量に採用しはじめるかもしれません。その前に入っている年齢層の職員は、昇進の面で将来有利になると思われます。(年功序列的なシステムが将来も続くならです。もっとも、役所に関しては、今後10年、20年で大幅に変わるとは思えません)

平均年齢が低いケース 
以下は、平均年齢が低い自治体の代表として、都下の小金井市(38.4歳)の職員構成です。

 出典『小金井市人事行政の運営等の状況の公表』

5年前と比べて、職員の年齢構成の変化が劇的です。ベテラン職員の割合が激減しています。

級別の構成で見ても、下位のほうが多く、係長、課長となるにしたがい割合が減少しています。組織として概ね自然な形です。

ただ、ベテラン職員が一斉に定年を迎えたからかもしれませんが、課長補佐級の職員数が非常に少ないため、しばらくは管理職候補の不足に悩まされそうです。

また、長期的には別の課題に直面するおそれがあります。

近年、団塊の世代の定年退職による大幅な欠員を補充するため、新規採用を増やしていたようです。このため、30歳前後のところではっきりと山ができています。

30年後(定年が伸びて40年後か?)に、ベテラン職員が多いことによる人件費の負担増、退職金支給の負担と、財政的に厳しい時期を迎える可能性があります。

都庁でも職員の年齢バランスが悪い時期がありました。こうした状態では、人数の多い年齢層では経歴に応じたポストが足りなくなります(要は出世しにくい)。
一方で、採用を抑制していた年代では管理職候補が足りなくなります(意欲・能力がある職員は出世しやすい状況とも言えます)。

小金井市のようなケースでは、これから職員になる方にとっては、同年代の若い職員が多く、活発な雰囲気で馴染みやすいかもしれません。大勢のベテラン職員に囲まれ、何年経っても雑用を回されるということは少ないでしょう。

もっとも、同年代に職員がひしめいていますので、昇進、人事異動に関してはライバルが多いとも言えます。


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