残業の多さに関する誤解

残業の多さは就活生にとって就職先選択の重要な要素となっています。

地方公務員を志望する方の中では、都庁は残業が多いほうに分類されているようです。このため、都庁への就職をためらう方もいるのではないでしょうか。

自治体ごとの平均的な残業時間については、こちらの記事で紹介していますが、組織間の差もさることながら、ひとつの組織の中での部署間の差が大きいのが実際です。

就活生の間で都庁での残業時間が議論され、都庁の残業は多いと言及される場合、おそらく本庁の部署が前提になっていると思われます。

採用案内のパンフレットなどでも、注目を集めやすい部署を中心に紹介されることが多いため、本庁部署に焦点が当たるのも仕方ありません。
(一方で、どの自治体にも税の徴収業務はあるはずですが、その重要性ややりがい、現場の苦労などが就活生向けの案内において前面に出ることはまずありません)

実際には、都の本庁と出先の職員数の割合は、1:3くらいです。本庁部署を前提に残業の多寡を議論するのは正確ではありません。

職員のキャリア志向には個人差があり、本庁部署を中心にキャリアを歩む方もいれば、出先を中心に歩む方、本庁と出先を行ったり来たりする方と様々です。一般像を描くのは難しいですが、数字の上では出先勤務のほうが多数派です。

また、約1,000名に及ぶ新規採用職員の全員がいずれ本庁で勤務することになるわけでもありません。

したがって、都庁に入れば月40~50時間の残業は当たり前というイメージは誤解であると言えます。
それは本庁の忙しめの部署に配属されたら(異動したら)という前提であり、特に入都早々にそうなる確率は低いでしょう。(配属部署によっては、最も忙しい一時期にそうなる可能性はありますが)

また、通常、本庁の多忙な部署への異動は本人の希望に基づいて選抜されるため、本人の意に反してまで配属されることはありません。

都庁に就職するなら残業40~50時間は覚悟、まして100時間の残業もありうるというのは杞憂です。基本的に、本人が望まなければ、そうした部署に異動することはありません。

もっとも、これは都庁以外の組織でも同様ですが、組織の中で重要とされる部署ほど業務量が多いのが通常です。残業はあまりしたくないが枢要部署で難易度の高い仕事に携わりたいというのは難しいです。

現状では、残業が少ない部署は、現場での事業の執行など、定型的な業務を扱う割合が高いと言えます。

単純化すれば、残業をいとわず組織の中枢で働き、上位の役職を目指すのか、ワークライフバランス重視で業務内容や昇進もほどほどのところを目指すのか、という選択です。

都庁で前者を目指すのであれば、月40~50時間の残業は当たり前、というのは間違いではありません。一方、後者を志向する方には、「都庁に入ったらそんなに残業しなければいけないのか」という心配はほとんど杞憂に終わるでしょう。

なお、本庁部署を中心に歩むことを希望する場合も、人事異動のローテーションの関係で、出先事務所の管理職を務める時期などもあるため、定年までずっと激務が続くということはありません。

都庁に就職することの利点は、就職の時点で決めなくてよいということです。採用の時点で幹部候補、本社採用の総合職などの区別がないためです。

少数を幹部候補として別枠で採用する組織であれば、組織にも人材育成の都合があります。入ってから「ワークライフバランスを重視したい」「残業の少ない部署に異動させてほしい」と言っても、それは通らないかもしれません。

都庁の場合は、入ってから自分で進路を選択することが可能です。毎回狙い通りの部署にピンポイントで異動するのは難しいですが、業務内容はともかく、業務量に関してはある程度選択可能です。

例えば、若いうちに本庁の多忙な部署を一度経験し、ライフスタイルや家庭の事情などで自分に合わないと感じるなら、異動希望を出して、出先を中心に勤務するキャリアに切り替えることは可能です。

都庁に入れば激務がずっと続くかもしれないと心配する必要はありません。

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