都庁女性職員のキャリア形成
- 家庭・育児との両立は可能か

公務員と女性管理職:
地方公務員の管理職に占める女性の割合は、都道府県(6.4%)、政令市(9.5%)、市区町村(9.0%)となっています。
(内閣府「地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況」平成27 1月)

 ※警察官や教員等を除く、一般行政職(いわゆる「都庁(県庁)職員」)のデータ

なお、国家公務員の管理職(本省課室長相当職以上)に占める女性の割合3.3%です。
(内閣府「女性の政策・方針決定参画状況調べ」平成26年度)

前掲、都道府県の上位は、東京都16.2%、神奈川県11.3%、鳥取県10.1%。

なお、政令市の上位は、千葉市16.1%、相模原市13.7%、大阪市13.0%。

公務員組織の中で、都庁は、女性管理職の割合が最も高い水準にあると言えます。

都庁の女性管理職:
まず、都庁職員全体のうち女性が占める割合は約40%です。

一方、課長代理、課長、部長と役職が上位となるに従い、女性の占める割合は、30%、20%、10%と減少します。
(都人事委員会 平成26年4月1日現在 都職員の構成)

局長級については、近年は1~2名で推移しています。

現状、女性の課長代理(従来の係長・課長補佐)や課長級(特に出先事務所)は珍しくありませんが、本庁課長、部長級以上となると、かなり人数が少なくなる印象です。

当記事の後段でも紹介していますが、都庁の人事当局も、その要因を踏まえて、女性幹部のさらなる育成や支援策を打ち出しています。

上級幹部への抜擢人事も意識改革として意義がありますが、継続的に女性幹部を輩出する観点からは、上級幹部の予備軍である課長代理、課長のうち女性の占める割合を、全体の割合(40%)に近づけることが肝要と考えます。

結婚、出産・育児と仕事:
次に、女性職員が結婚、出産・育児というライフイベントを迎えて、仕事を続けられるかについて紹介したいと思います。

なお、家庭の事情や、仕事と家庭のバランスをどう考えるかは個人差がありますので、一般的なところを紹介させていただきます。

まず、結婚時です。
結婚を機に退職する都庁職員は極めてまれです。

あるとすれば、転勤の多い職業の方と結婚する場合に、結婚を機に退職する、あるいは、配偶者の転勤が決まったのを機に退職するケースくらいでしょうか。もちろん、退職して同行するか、当面、単身赴任してもらうかは、自身のキャリアの志向や、望む所得水準などにもよるでしょう。

なお、平成27年4月から、配偶者の外国への転勤等を理由として離職することを防止するため、「配偶者同行休業制度」(原則3年間まで。事情に応じて延長も可)が導入されています。


次に、出産・育児の際です。
出産・育児を機に退職する都庁職員もまれです。

産休・育休を取得し、その後に復帰するのは都庁では当然のことと捉えられています(公務員全般にそうだと思いますが)。

また、子どもが生まれれば、将来の教育費など、支出は増えます。単身や夫婦のみ世帯と比べて、広い住居も必要です。通常の場合、経済的にも、退職しない方が得策ということもあるでしょう。

もちろん、子育てや教育のスタンス、家庭の環境は人それぞれです。あえて退職して家庭に専念したいという方もいるかもしれません。

少なくとも、都庁では、子育てをしながらでは仕事が務まらないから退職せざるをえない、ということは決してありません。複数のお子さんがいて家庭のほうも忙しいという場合でも、両立可能な職場はありますし、実際に、子育てをしながら都庁で勤務している方は数多くいます。

例えば、出先事務所が典型的ですが、残業のほとんどない職場で、なるべく自宅から近いエリアという希望を出すことは可能です。その代わり、仕事の内容までは希望どおりではないかもしれません。

都庁の場合、採用の枠で、総合職や一般職、本社採用や地方採用といった区別はありません(一部の各局採用枠を除く)。若い時は総合職的な働き方をして、その後のライフイベントに応じて、本人が望むなら一般職的な職務や、地方採用的な働き方に切り替えることも可能です。

また、そうした区分が明確に存在するわけでもないため、その中間的な働き方をすることも可能です。数万人の職員がいて、仕事へのスタンスも様々ですから、本庁のコースから降りたら居づらくなるといったことはありません。

「総合職として採用したのだから、これくらいはやってもらわないと困る」といった有形、無形のプレッシャーがないのは都庁のよいところです。
一方、その裏返しとして、本人にその気がないと、より難易度の高い仕事の機会が無条件に与えられるわけではないため、キャリア形成を考えている場合は注意が必要です。

まとめると、都庁では、出産や育児を機に、仕事を辞めなくてはいけないということはありません。お子さんが2人、3人といらっしゃる女性職員でも、他の職員と同様に勤務している方は大勢います。ただし、残業が少ない出先事務所等での勤務を希望するケースが多いようです。

災害対策などの部署でない限り、特に業務量の多くない出先事務所であれば、土日や夜間に突発的に仕事が発生することはまずありませんので、子どもの送り迎えなど、予定は立てやすいと言えます。

もちろん、お子さんがいれば、単身時代や夫婦だけのときと同じようにとはいきません。「両立可能」と述べましたが、定時までに仕事を完了させる工夫や、ときに自分の帰りが遅くなる場合の体制を整えることなども必要で、楽に達成できるとは申しません。

それでも、仕事と家庭との両立、ワークライフバランスを重視している方にとっては、世に数多くある職業の中でも、恵まれた環境であると考えます。

育児とキャリア形成:
一方、子育てをしながら、本庁でキャリアを築きたい、将来は部長、局長といった高い職位に就きたいという場合は、別段の考慮が必要です。

「都庁 組織・人事改革ポリシー」でも、出産を契機とする主任試験の受験率低下、出産や育児を理由として係長級職(現・課長代理)への昇進を躊躇する職員が増加するという状況が指摘されています。

都庁では、出産・子育てを契機とする「離職」ではなく、「キャリアロス」が問題となっています。冒頭で紹介した、役職が上がるに従い女性の割合が減少するという状況も、これを裏付けています。

組織の側でも産休・育休制度、時短勤務、都庁舎の敷地内に保育所設置など、側面支援は行ってくれますが、個別の事情に対応するには限界があります。完全なバックアップを期待することはできません。

もちろん、子育てとキャリアを両立させた方は都庁にもいますが、本庁の忙しい部署に勤務している時期とお子さんの年齢、配偶者や親に家庭をどれだけ手伝ってもらえるか、適切な保育施設が見つかるかなど、個別の事情も関わってくるのではないでしょうか。

先に都庁の女性管理職の割合を紹介しましたが、その中で子育てを経験した方となると、さらに人数が少なくなると想定されます。

もっとも、これは都庁だけではなく、程度の差はありますが、ほとんどの組織に見られる状況です。少なくとも、公務セクターにおいては、都庁は女性幹部の割合が高いほうです。

霞が関や大企業本社と比べれば、一年を通じて帰りが遅い部署は、都庁本庁でもそれほど多くありません。議会の時期など特定の忙しい時期を乗り切る体制を整えることができれば、家庭との両立は可能と思いますが、重責の職に就く場合、一定の年数、あるいは一定の時期、仕事に多くの時間を割かざるを得ない時があります。

本来であれば、本庁でも出先でも、管理職も一般職員も、定時に帰宅できるのが理想ですが、日本の雇用慣行、職業倫理観から考えて、近い将来にそうなることはなさそうです。

そこで、子育てをしながら勤務可能な役職を用意するという意図もあり、都庁は「複線型人事」の導入を打ち出しています。

「複線型人事」は、部下の面倒を見る立場(ラインの管理・監督職)でなくても、議会対応などで夜遅くなる役職でなくても、特定のプロジェクト等を担当する(業務量の限定された)課長代理職を設けるというものです。また、専門性を軸に、(ライン職を経ることなく)課長級、部長級へと昇進できる制度と想定されます。

これまでは、子育てのために若い段階でキャリアを降りるケースもあったと思います。もっとも、子育てが一段落ついてから重職を担いたいと考えたとしても、一足飛びで昇進することはできませんし、これまでの経歴と異なる仕事を任せてもらえることも稀です。

これからは「複線型人事」で、家庭との両立と無理のない範囲でキャリアを築き上げながら、将来、子育てに手がかからなくなった時点で、より責任の重い役職を引き受けるといったキャリアパスも可能となりそうです。

都庁では、女性職員でキャリア形成を考えている方には、キャリアプラン(ライフステージのどの段階で昇任試験に挑戦するかなど)の個別サポートが行わています。
キャリアの一例をお示しするなら、なるべく早い時期に主任試験に挑戦し、子育てに注力したい時期は「複線型人事」で言う(ある程度、業務範囲が限定される)課長代理を務め、仕事にもっと注力できる状況になった時点で、部下を監督する立場の(より責任の重い)課長代理へシフトし、ライン管理職への昇進を目指すことも考えられます。

キャリアに関しては、ある程度昇ってから、やはり自分には合わないと降りるのは、自分の意志で可能です。
一方、あまり早い時期に降りてしまうと、後から上がろうとするのはかなりハードルが高いという点は申し上げたいと思います。


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