都の職員は、世界有数の大都市の運営や、都市にまつわる様々な課題の解決を託されていることから、一自治体としての枠を超えた広範なフィールドに携わることとなります。
(なお、入都後は、庁内公募制人事に応募することで、自分が携わりたい分野を選んで異動することも可能です。異動先の部署がピンポイントで指定されていることもあります)
まず、東京の活力の源泉となる経済力について見てみます。(数値等については、産経新聞より)
1300万人の都民や、企業が生み出す「都内総生産」は92.4兆円(平成23年度)。これは日本のGDP473.3兆円の約5分の1を占めています。
また、諸外国と比較しても、韓国の88.2兆円を上回る世界14位の“経済大国”になる計算です。
次に、東京都の役所としての規模についてです。
東京都職員は警察、消防、教職員を含め約16万人。神奈川県鎌倉市の総人口に相当します。
警察、消防、教員を除くいわゆる「都庁職員」の数は3万8千人。そのうち約1万人が新宿の本庁勤務です。
こうした国家に比肩するほどの予算を抱えているからこそ、国に先駆けた提案など、都の枠組みを超えた大胆な政策を打ち出せると考えられます。
また、組織の規模が大きいことから、専門部署を設けることが可能で、職員も専門性を高めやすい体制が整っています。
この点で、新規施策を打ち出すようなことだけでなく、様々な実務の取扱いの面でも、他の自治体から一目置かれ、都庁のやり方が参考にされることも多いです。
(規模が小さい自治体では、職員が一人で何役も務めないといけないため、専門性を深めるのはなかなか難しいのです)
さらに、府県と市の役割を合わせた「都」制という大都市制度が、他の自治体にはない、大都市を一体的に運営する権限をもたらしています。
なお、公務員試験の面接の場においては、以上のことは、受験生が都庁に関心を持ったきっかけとして話す分にはよいですが、面接官が期待しているような「志望動機」には該当しないことに注意が必要です。
ところで、森記念財団が行っている「世界の都市総合力ランキング」(2014)では、東京は、ニューヨーク、ロンドン、パリに次ぐ4位となっています。
一方、アジア諸都市も、シンガポール(5位)、ソウル(6位)は昨年よりもスコアを上げ、東京との差を縮めました。
都知事も同ランキングに言及したうえで、東京を世界一の都市にする目標を掲げています。ロンドンが五輪開催をきっかけとして、また、起爆剤として都市の評価を上げたこともよく言及されます。
数字やランキングが全てではありませんが、目標が明確なほうが努力の方向も見え、達成度合いも分かりやすくなることが多いでしょう。
世界一を目指す(もちろんそれを支える裏方の仕事もありますが)というのは、これから何かを成し遂げたいと考える若い方にとって、とてもやりがいのある仕事ではないでしょうか。
以上は、やりがいの面から見た都庁の仕事ですが、次に、生活の糧を得るための仕事という観点で述べたいと思います。
東京の経済は多様な産業、雇用に支えられています。ある分野の産業の景気が悪くなることで都市全体が沈むということはありませんから、リスクが分散されているとも言えます。
もっとも都税のうち、法人関連の税収が他の自治体より多いため、企業の景気に税収が左右されやすい面があるのも事実です。
2000年代後半の世界的な金融危機の際には、都税収入が1兆円減となったこともありました。それでも、そうした事態に備えて基金も積み立てられていますし、100年に一度の危機と言われたように、そう頻繁に起こることではありません。
上記の金融危機の真っただ中でも、民間の水準に合わせるための給与・ボーナスの調整(人事委員会勧告)は行われましたが、特段の人員整理、給与カットは行われていません。やはり安定しています。
職員として組織の階段を昇ることを考えても、組織の規模が大きいため、それだけポストがたくさんあります。生き残りをかけて熾烈な争いがあるというほとではありません。
都広報によると、平成26年4月現在で、課長級1,212、部長級383のポストがあります。(公表データには水道局など公営企業の分は含まれていないため、実質的にはさらに多いはずです)
また、給与水準に関して上を目指したいという方の場合も、都庁には部長の上に「局長級」があります。これは中央省庁の局長、審議官と同様に、局長級から上は給与制度が別扱いになります。
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