覚えた知識で高得点がもらえるのは専門記述まで。論文・面接では、どれだけ普段から問題意識を持って物事を考えているか、どのように行動しているかが問われます。
つまり、「普段からこういう思考や行動をする人材であれば、都庁の職場でも同じように活躍できるだろう」という視点で受験生を見ているのです。
就職先として都庁を検討するにあたって、また、論文・面接試験の対策として、自分は東京をどのような都市にしたいのか、都政にはどのような課題があるのか、都庁で働くというのはどういうことか、自分は都庁で何を成し遂げたいのかなど、気づきを得るための参考となる書籍を以下に紹介します。
<東京の都市戦略>
『東京一極集中が日本を救う』
地方分権や、都市と地方が共に栄えることを理念とする地方自治の世界において、「東京一極集中」を推奨するのはタブーと言える。少なくとも、言い方やニュアンスには相当気をつける必要がある。
「東京一極集中が日本を救う」というタイトルは、地方自治関係者には挑戦的なタイトルである。いわば地方自治の世界の「言ってはいけない」で、レビューの評価は真二つに分かれる。
もっとも、著者の真意は、東京が力を付けることで国際競争を勝ち抜き、全国を代表して稼ぐという点にあり、東京が繫栄すればそれでよいということではない。当書は東京の話題が中心となるため、都内自治体への就職を検討している方にお勧めしたい。
『東京2025 ポスト五輪の都市戦略』
著者は、2020年の東京五輪を契機として、現状4位の東京の都市総合力ランキングが3位まで浮上と予測。これから都庁に入る方の場合、東京五輪は通過点に過ぎない。東京をどのような都市にしたいのか、五輪後も見据えた発想が求められる。
『東京大改造マップ 2016-2020』
2020年に向けて東京はこう変わる─
東京オリンピック開催決定でさらに勢いを増す東京の都市改造の最新動向について、詳細な地図を交えて解説されている。『東京劣化 地方以上に劇的な首都の人口問題』
明るい未来予想図とのバランスを取るために、東京の問題を指摘した書籍も紹介したい。
著者の松谷教授は、人口減少下の財政施策を専門とする方で、当方が都職員時代、審議会のゲスト講師としてお迎えし、お話を伺ったことがある。「人口減少や高齢化が進んでも、ITやロボットテクノロジーを進歩させれば日本経済は大丈夫だ」といった甘言には与しない。厳しい現実、悪いケースのシナリオも突き付けられるが、行政関係者としては、そうした「不都合な真実」も直視する必要がある。採用試験の論文、面接に向けて、施策のアイディアや議論のネタとしても参考に。
『世界の都市総合力ランキング』
ニューヨーク、ロンドン、パリ、上海、シンガポールなど、世界の大都市と比較した、東京の強み、弱みとは。そこから見える東京の歩むべき道はどのようなものか。世界の主要40都市について、経済力、居住性、治安、交通利便性など、70の指標で分析。
また、グローバル・シティを舞台に活躍する「経営者、研究者、アーティスト、観光客」及び「生活者」の視点からの、各都市の要素別スコア・順位も掲載。
<都庁の構造とその権力>
『都知事-権力と都政』
もう一つの政府とも言われる東京都の知事は、首相より強い権力者と言われる。GDP世界第10位以内相当の力を持つ東京都は、日本で突出した力を持ち国政にも影響を与えてきた。国の一歩先を目指してきた都政の歴史をたどりながら、東京の実態とその可能性が検証されている。
『東京都政-明日への検証』
都庁官僚の構成とその活動、都知事の権力、都政の政策形成の過程、そして税財政や都市再生、環境・福祉・文化などの政策論について解説されている。
『本音の都庁インサイト』
前掲『東京都政』が都庁機構の全体像を解説しているのに対し、本書は都庁で働く職員の視点から、待遇、人事評価、出世、人事異動などについて、具体的なデータや事例を紹介。
<都庁に関する小説・ドキュメンタリー>
『M8』
首都直下の巨大地震に見舞われた東京を舞台とした小説。都知事、都職員(総合防災部を想定か)が奮闘する姿が描かれている。防災施策に関心がある方は、首都直下地震が起きた場合のシミュレーションの一例として参考に。
『首都感染』
海外から東京へ強毒性の感染症が広まる危機を描いた小説。危機管理対策に関心がある方へ、シミュレーションの一例として参考に。
ヒト、モノの往来が活発な現代にあっては、大規模感染症は一都市のみの対策で防ぐことはできない。
『東京大洪水』
大型台風の直撃による東京水没の危機を描く、災害サスペンス。防災施策に関心がある方へ、そのとき東京では何が起こるのか、シミュレーションの一例として参考に。
『東京都主税局の戦い-タブーなき改革に挑む戦士たち』
主税局職員が一丸となり、銀行外形標準課税、ホテル税の導入、不正軽油撲滅に取り組んだ実際の姿を追ったドキュメンタリー。後に全国に波及した銀行外形標準課税では、霞が関を相手に一歩も引かない都庁職員の姿が描かれる。