東京都庁の採用面接試験

面接試験対策というと、受け答えの上手さ、気の利いた応答に焦点が当たりがちですが、面接で評価される本質的な事柄を、本番に向けて少しずつ整理しておくとよいと思います。

面接は既に一定水準をクリアした受験生同士の戦いとなります。僅差の勝負が想定されますから、直前の対策で、アピールの仕方を磨き上げることも大切です。しかし、それだけでは深いところが身に付きません。

採用試験案内でも、「人物についての個別面接」を行うと記載されています。

本番の緊張状況で突っ込んだ質問をされると、つい素の自分が出てしまいます。
そのとき現れる「素の自分」が、面接官から見て評価に値するものかどうか、合否を分けることにもなります。

面接試験では何が評価されるか。

コミュニケーション能力がよく挙げられます。確かに、組織内外の人と共に仕事をするために重要な能力です。
都庁での仕事に必要な能力ですから、面接試験でも試されていると考えてください。

ただ、話し上手であれば、コミュニケーション能力ありと評価されるわけではありません。
面接官は受験生のエピソードを初めて聞いています。淀みなく次々と話されると、ついていけません。

これは受験生の皆さんが就職後、職場で上司に報告をするときも同じです。
上司には複数の部下がいます。部下から報告を受ける案件も様々です。

「課長、先日のあの件ですけど、ペラペラペラ・・・」と言われると、何の案件だったかな、と思い出しているうちに次々しゃべられてしまい、理解できません。

「何の話か分かるように、整理してから説明してくれ」と言われて減点です。

この点は採用試験に関しても示唆に富むところではないでしょうか。

こちらがわざわざ説明に行っているのだから、相手も集中して聞くべきだ、先日報告した内容くらい覚えておいてほしい、と考えることも可能です。

しかし、評価するのは相手のほうです。相手の視点に立って、自分の話し方で分かりやすいか、納得できるか、を考えるべきです。

「先日の〇〇の件で、ご報告してもよろしいですか」と切り出したところで、「ああ、〇〇ね。その後どうなった?」という反応であれば、詳細を続けて話して大丈夫です。

「〇〇って何だったかな?」という反応であれば、まだ相手は詳細を聞く態勢が整っていません。

相手の関心や理解の度合いを伺いながら、話す長さやスピード、内容を調整することも、コミュニケーション能力に含まれます。

また、相手は、今は緊急の業務で手一杯かもしれません。何もしていないように見えても、重要な意思決定を下すために、集中して考えている場合もあります。

「〇〇の件でご報告したいのですが、今、お時間よろしいですか」と切り出すべきでしょう。相手が自分のために時間を割いて当然という姿勢ではなく、相手に配慮していることを示すのも、コミュニケーション能力のうちです。

(面接試験の場面に敷衍すれば、面接官は受験生の話を黙って聞くべきである、受験生は外部のお客様であり丁重に遇されるべきであるという先入観は危ないと言えます)

「この忙しいときに」とイライラしながら話を聞いてもらっても、相手に理解してもらう、納得してもらうという目的を達成できないかもしれません。

もちろん、本当に緊急の用件であれば、今、話を聞いてもらう必要があることを初めに説明すべきです。
上司の仕事を止めてでも報告すべき緊急事案かどうか自分で判断できないなら、まずは先輩に相談するなど、柔軟な解決策を模索する姿勢も大切です。
さらに言うと、困ったときに気軽に相談できる(話しかけやすい)良好な人間関係(ネットワーク)を構築していることも必要になります。

確かに、上司、先輩のほうからも手を差し伸べるべきですが、評価されるのは、まずは自分からという姿勢です。

それから、自分が話す以前に、相手の問いを的確に把握することが大前提となります。不明確なことがあるなら質問する、確認する、これも大切な能力(姿勢)です。

面接官も、受験生が質問の趣旨を取り違えることがあるのは理解しています。これは職場でもよくあることです。
その時に、面接官の「違うよ」というサインに気付いて、軌道修正できれば問題ありません。

面接試験では、受験生がミスをしてしまうことは当然あります。ただし、面接官は、面接試験という特殊な状況で偶然発生したことか、それともそういう人材なのか、判断を下します。

例えば、緊張しているため質問の意図を取り違えただけなのか、それとも、相手の話を聞く姿勢に欠けるのかということです。

コミュニケーション能力に関してだけでも、これだけあります。行動力や、課題設定力、他者を巻き込む能力など、職務で求められる能力(受験生にも素養として求められる能力)は、他にも様々です。

ところで、自然に振る舞うだけで、結果的に合格する受験生もいます。

ゼミや部活などを通じて、都庁で働くための人材としての基礎力を身に付けられる環境にいたこと、そしてそれを面接官に的確に伝える能力がその環境下で自然に鍛えられていたと考えられます。

その合格者自身は「自然に振る舞っただけ」という実感かもしれませんが、自然体で臨んだことが評価されて合格したのではなく、様々な評定項目において一定水準を超えていると評価されたから合格したのです。

そうした合格者も一定数存在しますが、面接1回の失敗でその年の受験が終わってしまうことを考えれば、単に自然体で臨むというのはリスクが高すぎます。
併願先の一つくらいの認識ならともかく、都庁が本命だというのなら、戦略的に考えなくてはなりません。

面接官が何を見ているのか、つまり、どのような人材に合格してもらって、自分の部下、後輩として一緒に働いてもらいたいか、この点を理解しておくことは非常に重要です。

人柄の良さや協調性をアピールするだけでは足りないし、コミュニケーション能力が高いだけでも足りません。

面接試験の実施は、主催者側から見ても、時間と人手がかかり大変です。それでも、受験生に直接会わなければ分からないことがあるため、複数の面接官を割いて試験を実施しています。

面接官が受験生の何をチェック、評価しているかについては、「都庁採用面接で試されていること」、「採用面接の評価基準」で考察したいと思います。

通年学習から直前期対策までを見据えた
都庁OBの受験対策シリーズ (amazon.co.jp)
都庁面接試験の本質 (上・下巻)


都庁論文試験の本質 (上・下巻)




都庁の「理解度」でライバルに差をつけるために
本当の都庁の姿、都庁の仕事、組織が職員に求めている本音を理解し、正しい方向で採用試験に向けた準備を進める


ミクロの視点で人物評価の根本に迫る面接対策
100の場面を通じて、実際の職場で優秀と評価されている都庁職員の習慣から学ぶ、面接で評価される人材の思考・行動様式