都庁面接試験の制度変更(2015年)が示唆すること

2015年実施の都庁採用試験から、1A(事務)及び1B一般方式(行政)で、従来2回実施していた面接回数が1回となりました。

今回は、この変更が何を示唆するのかについて考えます。

人材を見極めるために、面接は一回で十分 
端的には、採用当局は、1回の面接で人材を見抜く自信があるということです。

もちろんこれは、採用すべき人材を見抜くという意味で、その受験生の全人格を見抜くということではありません。

面接試験は、都庁で活躍できる素質を持った人材を選抜するために行っています。一人ひとりの受験生について深く内面を知ること自体は目的ではありません。

採用当局がこれまでの実績を検証した結果、従来の1回目と2回目の面接で、評価の逆転はあまりなかったということでしょう。

面接を1回に減らした背景には、試験から内定までのスケジュールの関係や、できるだけ多くの受験生に面接の機会を与える一方で相当数の面接官を確保する必要があることなど、運用上の都合もあります。

しかし、面接の回数を減らすことで、本来取るべき人材を採り逃しては本末転倒です。
面接1回で、採るべき人材は見抜けると判断しての動きと考えます。

都庁の場合、幹部候補とその他と峻別せず、多くの人数をまとめて採用します。枢要部署への抜擢や昇進は入ってからの働きぶりを見て行われるため、入都前の段階でそこまで緻密に人材の潜在能力を仕分けする必要はないとの判断でしょう。

これは中央省庁の採用の考え方とは大きく異なります。

人物を見極めるためには、複数回に分けて、別の面接官の目で見たほうが確実ですが、都庁では(少なくとも採用の段階では)そこまでは必要ないとの考えです。

受験生にとっては、面接が一発勝負となります。

合否のボーダーライン付近では、2回の面接でじっくり検証してくれたら合格できたのに、という人も出てくるでしょう。実質的な実力は変わらなくても、1点、2点の違いで最終合否を分けることもあります。

受験生の側から見れば、合否は大きな分かれ目です。たった一回で決めずに、挽回のチャンスを与えてほしい、評価を確実に行ってほしいという思いかもしれません。これは十分に理解できます。

一方、採用当局の目的は、都庁で活躍できる素質を備えた人材層を一定数採用することです。
採用当局の視点では、ボーダーライン付近で誰かと誰かが入れ替わったとしても、一定の点数で区切る以上、仕方がありません。

採用当局と同じ視点で臨むためには、受験生としては、「自分の人格を評価してほしい」という漠然とした発想から、「自分のスキルや行動様式・思考様式を評価してほしい」という発想に切り替える必要があります。

面接官から見て、「不合格とは言わないが、ぜひ採用したいというほどでもない」との評価に留まってしまうと、最終合否は内定人数しだい、運しだいになりかねません。

一回勝負の面接でも確実に受かりたいのだという場合は、ぜひ採りたいと思わせる人材の枠に入ること、少なくともそれに準じる枠に入ることがカギとなります。

受かればいいなと漠然と構えるのではなく、ボーダーラインを明確に超える評価を積極的に取りに行くという姿勢です。

また、次の面接での挽回はできませんから、予行演習をしっかり行うことも必要です。

テクニック云々ではなく、コンパクトに相手に分かりやすい順序で話す、適切な事例を選ぶ、相手が知りたがっていることに焦点を当てて話すなどです。人前でプレゼンやスピーチを行う際に、ストーリーの骨格など事前に準備しておくのと同様です。

プレゼンやスピーチでは一方的に話すことが多いですが、面接の場合は、相手から急に質問を投げかけられたり、相手の要望するポイントに焦点を当てることなども要求されます。事前に覚えてきたことを再現するだけの人を見抜きたいという思惑もあるので、必ず行われます。

これには練習が必要です。ただし、できるかどうかの前に、相手の要望に気を配る、(相手の言葉や態度から)読み取るという意識を持つことがまず大切です。

相手の要望というのは、例えば、「もっと詳しく具体的に」と言われたり、「簡潔に概要を」と言われたりします。そうした力が検証されるのは、仕事の場面でも、相手の立場や場面によって知りたい深さが違うからです。

例えば、急いで概要だけを知りたい上司(や議員)に対して、自分は詳しく知っているからと延々と細かな話をしても評価されません。

逆に、「制度の概要は知っているから、現場の実情について詳しく教えてほしい」ということもあるでしょう。そうした対応力、表現力があるかも評価のうちです。

面接官から何度も「簡潔に答えてください」と指示される受験生がいたとすれば、ポイントがずれたことを長々と話しているということです。本人はアピールのつもりで一生懸命に話しているかもしれません。

しかし、評価する側にとっては、事前に覚えてきたことをただ再現しているとの疑念もわきますし、上司や同僚との意思疎通が取れるか不安と見られるおそれがあります。

上司から、「こういう点に注意しながら〇〇業務を行ってほしい」というオーダーが来ることもあります。(何でも好きなやり方でということはありません)
そのときに、相手の要望を聞いていない、応えるつもりがない人材では職場が困るということです。

面接で質問に答える場合でも、「簡潔に」と言われればコンパクトに概要を話し、「詳しく」と言われれば具体体も交えながら詳しく話せること(完璧ではなくても、それに応えようとする姿勢)は大切です。都庁の職場で求められる能力の素質を示すものと言えます。

文章や表現がどんなに練られたものであっても、相手の要望に応えていないものは評価に値しません。


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