2040年に生き残る自治体

公務員を目指す受験生の方にとって、二十数年後の2040年は、職業キャリアの真っ只中にあり、重職を担うことも多い年代にあたります。

2040年における全国の自治体は、どのような状態になっているでしょうか。地域別の人口予測をもとに検討を行います。

2040年の地域の姿

「国立 社会保障・人口問題研究所」が発表した『日本の地域別将来推計人口』(2013年3月推計)によると、2040年にはすべての都道府県で人口が減少しています。

2010年に比べ、全国平均で16.2%の減少となりますが、地域差が非常に大きくなります。

都道府県別に見ると、人口の落ち込みが最も大きいのは秋田県の35.6%減、次いで青森県の32.1%減、高知県の29.8%減。
一方で、落ち込みが小さいのは沖縄県の1.7%減、東京都の6.5%減、滋賀県の7.2%減。

<減少率上位10県>
 秋田  -35.6(減少率、%)
 青森  -32.1
 高知  -29.8
 岩手  -29.5
 山形  -28.5
 和歌山 -28.2
 島根  -27.4
 徳島  -27.3
 福島  -26.8
 長崎  -26.5

<減少率下位10県>
 大阪  -15.9(減少率、%)
 京都  -15.6
 千葉  -13.8
 福岡  -13.7
 埼玉  -12.4
 神奈川 -7.8
 愛知  -7.5
 滋賀  -7.2
 東京  -6.5
 沖縄  -1.7

こうした推計(中位推計)では、これまでの傾向が続いたらという、穏当なシナリオを前提にシミュレーションが行われます。東京への一極集中がこれまで以上に加速するといった(不都合な)シナリオは、織り込まれていません。

『東京都の人口』(東京都総務局)によると、東京都の人口は以下のように増加を続けています。流入人口は、景気の動向や大規模な自然災害の発生などにより変動する側面もありますが、近年、東京の人口増は加速傾向も読み取れます。

出典:東京都総務局

ひと昔前までは、東京の人口というと約1,200万人というイメージでしたが、いつの間にか、1,400万人到達が見えるところまで来ました。

先の『日本の地域別将来推計人口』(2013年推計)では、東京都の人口は2015年:1,335万人、2020年:1,332万人との推計でした。(各年、国勢調査の10月1日を基準)

実際の人口は、2015年10月1日時点で1,351万人と、かなり上振れしています。わずか2年半先の人口を16万人も読み違えるほど、想定を上回るペースで人口が流入したと言えます。2020年の人口も推計を上回る可能性が高そうです。

この傾向が続くと、先に紹介した2040年の東京の人口も、次回の2018年推計で上方修正される可能性もあります。

また、『日本の地域別将来推計人口』では、地域別の65歳以上人口の割合も推計しています。人口減少が大幅に進む地域ほど高齢者が占める割合が高くなり、逆に、人口減少の幅が小さい地域ほど高齢者の占める割合は比較的低いという傾向が表れています。

人口が大幅に減少し、高齢化も進む地域では、税収の大幅な減少が予測されます。国の借金も巨額に及んでいることから、将来は政府によるバックアップもこれまでのようには期待できません。

、人口減少に伴い行政サービスに対する需要の総量も減少することから、現在の組織規模や、それに応じた待遇を維持することはできません。

役所の考え方からすると、職員を強制的にクビにすることは難しいため、長期的には、新規採用を絞っていくこと、さらに既存職員の給与のカットが併せて行われると予測されます。

一方、人口の減少や高齢化の進展が緩やかな地域の自治体に関しては、徐々に職員数をコントロールしていくこと、および行政サービスの効率化(ないしは多少の行政サービスカット)で対応は可能でしょう。

とはいえ、全国平均での公務員の待遇悪化に引きずられ、財政に余裕のある自治体においても、世論に配慮して多少は待遇を下げざるを得ない、という事態は想定されます。

このとき、全職員の給料を一律に下げるというのが、これまでの役所の風潮ですが、近年、職員間で差を付ける方向に舵を切る動きが、都庁などで見られます。

財政破綻した夕張市のケース

平成19年に財政破綻した夕張市では、一般職の職員に対してでさえ、30%の給与カットが行われており、平成18年に400名いた職員は、翌年には166名に激減しています。

夕張市のケースでは、ベテラン職員を対象とした勧奨退職はあったようですが、クビになったわけではなく、カット後の給与では生活できないためやむを得ず、また、今後の待遇を悲観して自主的に退職した職員も多かったと報じられています。

また、残った少数の職員は、薄給にもかかわらず、退職した職員の分も行政サービスを担わなくてはならないため、市役所の職員としてはかなりの激務と聞きます。

公務員はクビにならないから安定している、とは必ずしも言えないのが実情です。

そもそも公務員という職業は大丈夫か

このテーマについては、元・日経新聞記者の渡邉 正裕氏が著した『10年後に食える仕事、食えない仕事』の中で検討されています

多方面で話題になった本ですので、既にお読みになった方もいらっしゃるかと思いますが、グローバル化が進展する時代、現在世の中にある職業を以下の4つに分類し、10年後にどういった状況になっているかを予測するものです。

 ① 途上国の賃金レベルに引き寄せられる「重力の世界」
 ② 世界のエリートとの闘争が行われる「無国籍ジャングル」
 ③ 日本人ならでは、日本人しかできない「ジャパンプレミアム」
 ④ 日本人としての強みを生かしつつグローバル化に対応する「グローカル」

この本の中で、公務員については、キャリア官僚をはじめ政策立案を行うタイプの公務員と、住民サービスなどを行う典型的な地方公務員に分けて紹介されています。

詳細については本書に譲りますが、他の職業との比較でいうと、基本的には、公務員はやはり恵まれた職業と言えるでしょう。

いくら海外のほうが人件費が安いといっても、行政の仕事の多くは海外に移管できません。また、海外から招聘された優秀な外国人とポジションを争うということもまずありません。

公務員として安定を求るなら

今後10年、20年のスパンで、比較的安定した就職先として公務員になることを考えるのであれば、多様な産業を擁し、勤労世代の流入を見込めるような、大都市の自治体に就職する場合に限られます。

もちろん、自分が愛する地域を支えるために公務員になるという動機が、最初に来るべきではあります。
一方で、安心して職務に邁進するためには、ある程度、生活の安定が必要です。そうした安定を提供することができなくなる自治体が、今後、増加すると想定されます。

地方の特に小規模な自治体への就職を考えている方は、将来、たとえ給料が半分になったとしても、その地域の物価を考慮すれば何とかなる、あるいは、いざとなったら家業を継いで生活していけるなど、そうしたことも念頭に置いておくべきと考えます。

人口が減少を続ける地域でも、住民がいる限り、自治体が「消滅」することはありません。ただし、現在と同じ形で存続することもありません。最終的には、人口・財政規模の比較的大きい周辺の自治体に吸収合併されることになるでしょう。

財政破綻状態の自治体が少数であれば、事実上の国直轄もありえますが、総務省(自治部門)は数百人ほどの体制です。全国各地で発生となると国直轄では手が回りません。
一方で、県にも丸抱えで支援できる人的余力はないはずですから、ひとまずは周辺の自治体と合併ということになりそうです。

もっとも、かつて「平成の大合併」で、政府が自治体の合併を奨励したときもそうでしたが、基本的に、財政の豊かな自治体は自分の負担が増えるだけの合併を嫌がります(双方の議会の議決が必要)。将来、救済合併が必要になったとしても、財源が限られる中、国がこのインセンティブをどうするかが悩ましいところです。
あるいは地方自治の本旨をかなぐり捨てて、国や県が自治体合併を命令できるように制度を変えることも考えられます。

理念的には、隣町なんだから当然助けてあげるべきだ、となります。しかし、救済側が自分の地域での行政サービスや職員の給与を切り詰めて、救済される自治体へ回さなくてはならないとなると、実際にはそう簡単には進みません。

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