最も良くないのは、同級生との見栄の張り合いです。「いいところに就職したと言われたい」という発想は克服すべきです。
そうしたことが話題に上る(気になる)のは数年くらいで、いずれは、どの役所(会社)に所属しているかよりも、その組織の中での自身の立ち位置や、ワークライフバランスなどのほうが気になるようになります。
今、同級生の動向が気になるのは、接する機会、時間が多いためです。就職後は、同じ組織で働いている人との時間が増えます。また、家庭を持てば、家族と過ごす時間とのバランスも考えるようになります。
次に、親に対する義務感。親に喜んでほしい、安心させたいという気持ちはよく理解できます。
しかし、毎日8時間以上、数十年にわたり職場で時間を過ごすのは、親ではなく、本人です。
確かに、安定した大組織のほうが、職を失うリスク、収入が大幅に下がるリスクは低いと考えられます。
もっとも、組織内での立ち位置で、仕事の充実度や処遇は変わります。ただ給料をもらうために職場に通うだけという状況では、期待していた職務や待遇は得られないかもしれません。
特定の組織に入りさえすれば、全員がずっと満足できるということはありません。勤続年数に応じて処遇する慣習も徐々になくなっています。
一概には言えないかもしれませんが、本人の気が進まないまま安定した大組織に入るより、組織の規模や安定性では多少劣るとしても、本人が熱意を持てる仕事に携わったほうが、長期的に見て良い結果となるのではないでしょうか。
比較的小さな組織に入ったとしても、そこで将来の中核を担う人材として期待され、チャンスを与えられ、鍛えられることで、良い結果につながる可能性もあります。
大組織から結果的に内定を得なかったとしても、悲観する必要はありません。
どの組織に入ったから安泰ということも、ダメだということもなく、結果的にそれで良かったのだと思えるよう、自ら道を切り拓く必要があることに変わりないのです。
このことは、ひとつの組織の中でも同様です。本流部署に配属されたから安泰ということもなく、傍流部署だからもうダメだということもありません。
都庁では、最初の配属局を聞いて採用を辞退する方もいると聞きます。もし、これが冒頭でお話しした見栄やプライドからの決断であれば、もったいないことです。
大抵の大組織では、まず現場を経験させる、下積み経験をさせることは珍しくありません。
傍流部署で中核人材として注目され、それがきっかけで抜擢されることもあります。一方、本流部署に所属していても、周囲に埋もれてしまうこともあります。
また、本流部署といっても、各職員が担当している業務は様々です。全員が「華やかな」職務を担当しているわけではありません。
組織の名前や規模、部署のイメージといった表層的な部分で、就職先を決めることは避けるべきです。自分の志向に照らして、中長期の視点で、熱意をもって、誇りをもって取り組めそうな仕事がその組織にあるか、吟味する必要があります。
そして、一定の期間、希望外の部署に配属される可能性、希望外の業務を担当する可能性があることも含めて、その組織を志望すべきです。
この点を理解したうえで志望しているかは、ミスマッチを避けたい面接官の関心事項でもあります。