都庁の面接試験は、最終合否に多大な影響を与えるにもかかわらず、何が評価されているか分かりにくいと言われます。
試験案内には「主として人物に関する個別面接」とありますが、「人物」とは性格のことか、適性のことか、能力のことか、これだけでは曖昧です。
採用試験は、8~9か月後に都庁で働く人材の選抜です。面接官は、自分の部下をはじめ、都の若手職員の能力や行動様式をイメージしながら、受験生が都庁で活躍できる人材か評価します。
優秀な若手職員と遜色ないということであれば、受験生の中でそれは高く評価されるでしょう。
採用試験は、資格試験と比べ、評価の視点が大きく異なります。
前者は、仲間に迎え入れる人材の選抜です。面接官は、受験生の上司になるかもしれません。少なくとも、同じ組織の人間として、長い間、互いに関わっていくことになります。
後者は、能力の測定です。知識や能力が一定水準に達していれば良く、その人物の性向やキャリア観について面接官は関知しません。
まず、都庁の面接官が、どのような人材に仲間になってほしいと考えているか把握することです。そして、一つ一つの回答にそうした要素を的確に盛り込んでいくことが、面接試験突破のカギとなります。
また、「都庁の仕事はスケールが大きい」など、不用意な発言を避けることも重要です。殊に、熱意を示したつもりが、逆効果になってしまう事態は、悔やんでも悔やみ切れません。
一般に公務員の資質と考えられていることを、自分の強みとしてアピールする際も注意が必要です。本当にそれが重要であると、インターンなどの経験や都職員との面談などを通じて確認しているのであれば問題ありません。
都庁がどのような人材を欲しているのか、原理・原則を押さえることが大切です。
都庁は即戦力の人材を採用したいのでしょうか。
それならば、ワード、エクセル等が使えて、電話対応も問題なくできるといった個別のスキルが大切になります。
それとも、5年、10年かけて行政のプロ人材を育てる方針でしょうか。
都採用当局が優先的に確保したい人材は、事務補助員ではなく、将来、政策の企画・立案を担う人材、施策実施の統括を担う人材です。
仕事で必要とされる能力・スキルは様々ですが、優先順位があります。できるだけ多くあったほうが良いものもあれば、程ほどで良いというものもあります。
例えば、高度なパソコンスキルを既に身に付けた人材に、採用後、政策形成の能力や、行動力や積極性などを習得させることも考えられます。
もっとも、政策形成の能力、積極性などを備えた人材に、後で(パソコンなど)個別のスキルを職務の必要性に応じて教えるほうが簡単です。
8か月後には都庁の持ち場で働く人材の選抜という要素もありますから、配属先で「戦力となれる」ことは期待されていますが、「既に戦力である」必要はありません。
面接シートの作成や想定問答を整理するにあたって、様々な得意なこと、苦手なこと、強み、弱みが思い浮かぶと思いますが、何をどのような切り口で提示するかは非常に大切です。
上級レベルのパソコンスキル自体は評価対象とはならないでしょうが、何のために、どのように身に付けたかは面接官も関心を示すでしょう。(語学力なども同様です)
アメリカの事例ですが、近年、軍の士官学校を優秀な成績で卒業したタイプの若い軍人を、大手企業が幹部候補としてヘッドハンティングするのが流行していると聞きます。
学校でMBA(経営学修士)を取得した人材にリーダーシップや逆境への対処術を身に付けさせるよりも、何十人もの部下を統率し命がけの修羅場をくぐってきた人材にビジネスを教えたほうが手っ取り早いとの発想です。
人材確保に関し、組織が何を優先的に評価しているかという点で、示唆に富む事例です。
組織や職種(総合職、一般職など)によって、事務処理能力、発想力、行動力など、優先される要素は異なります。
自分の良さを伝えるためには、単に自分の強みをアピールするだけでは効果的とは言えません。
配属先によってはその強みを活用できないかもしれません。あるいは、その要素に関しては、ある程度の水準があれば十分(優れていても加点されるわけではない)と当局が考えている可能性もあります。