来年度、都庁を受験予定の方にとっては、今から択一・論文試験まで残り7か月少々、面接試験まで残り8か月少々となりました。
直前期の追い込みで実力を伸ばせる事柄もありますが、ある程度、時間の蓄積がないと効果を生まない事柄もあります。
まだ焦る必要はありませんが、試験本番までに残された時間が少しずつ減っていることは間違いありません。
そのためには、第一に、「努力の方向」を定めておくことです。第二に、「先延ばし」をしないこと。第三に、「自分の時間」に有効な投資を行うことです。
初めから適切な方向へ。挽回の時間は少ない
まず、第一に「努力の方向」についてです。
人事当局は「優秀な学生」を採りたいわけではなく、頑張っている学生へのご褒美として内定を与えるわけでもありません。
就活情報誌の人事部インタビューなどで「優秀な学生を採りたい」と人事の方が述べていることもありますが、これは言葉の綾で、「入社後の活躍が期待される学生」というのが本意です。
「優秀な学生」という言葉を鵜呑みにしてしまうと、「学業の成績も活動内容も悪くない自分が、なぜ評価されないのか」となってしまいます。
「優秀な学生」という言葉を鵜呑みにしてしまうと、「学業の成績も活動内容も悪くない自分が、なぜ評価されないのか」となってしまいます。
人事当局の本意としては、自分の組織(場合によっては他の組織)で「優秀である」「活躍している」「将来が期待される」と評価されている若手職員の姿を念頭に、同様の特性を備えた受験生を採りたいということです。
もっとも、こうした高評価を受けている職員の姿(どんな強みを持っているか、困難に直面したとき何を考え、どう行動するかなど)は一様ではなく、唯一の理想像があるわけではありません。
人事当局としても、様々な部署に多様な人材を配置する必要があります。いくら優秀な人材が揃っていても、皆が似たような特性であれば、効果的な組織運営ができません。
部署や局面によって、押しの強い突破力のある人材が求められることもあれば、人の間に立って穏やかに説得するのが上手い人材が求められることもあります。
部署や局面によって、押しの強い突破力のある人材が求められることもあれば、人の間に立って穏やかに説得するのが上手い人材が求められることもあります。
「こうでなければならない」という型に無理に自分を押し込めようとするのは勧められません。自分のものではない「他人の強み」の土俵で勝負しても不利になるだけです。
自分の強みを見極め、普段の活動・行動を通じてさらに伸ばし、そこで勝負すべきです。
自分の強みを見極め、普段の活動・行動を通じてさらに伸ばし、そこで勝負すべきです。
大学や予備校等で指導を受ける場合は、個人の強み、弱みに合せた指針を示してくれるものか、それとも、こうすべきと一つの理想像に合せようとするものか、よく見極めてください。
都庁の採用案内でも、多様なフィールドが存在することが都政の特徴と紹介されています。都庁のような大組織では、強みが異なる多様な人材が必要です。特定のタイプの人材しか評価されないということはありません。むしろ、1類Bの新方式が導入・拡大されたように、多様な人材の採用に積極的です。
もっとも、これは自分なりの強みをできるだけ磨くべきという話で、何も売りがなくても自然体で大丈夫ということではありません。
また、売りにしようと考えている自分の「強み」は、就職後に仕事で活用(応用)できる性質のものか、キャリア形成の柱となりうるものか、検証が必要です。いわゆる「企業研究」「業界研究」はこの観点から深堀りすべきです。
業界の事情やデータに詳しい就活生もいますが、採用側から見れば「よく勉強していますね」というだけで終わりです。仕事に必要な情報等は、研修や仕事に携わる過程で自然に身に付きます。「既に詳しく知っているから、この人材を採ろう」とはなりません。
また、売りにしようと考えている自分の「強み」は、就職後に仕事で活用(応用)できる性質のものか、キャリア形成の柱となりうるものか、検証が必要です。いわゆる「企業研究」「業界研究」はこの観点から深堀りすべきです。
業界の事情やデータに詳しい就活生もいますが、採用側から見れば「よく勉強していますね」というだけで終わりです。仕事に必要な情報等は、研修や仕事に携わる過程で自然に身に付きます。「既に詳しく知っているから、この人材を採ろう」とはなりません。
自分の強みを磨くことは、入都後にも組織から、そして上司からも求められます。学生時代に取り組んでいないようであれば、入都後も自分から積極的にはやらないだろう、と評価されても仕方ありません。
この点で、いわゆる「自己分析」は、面接試験を受ける時期に始めるのでは遅いです。
自分はどんな仕事で何を成し遂げたいのか、就職先候補を検討する段階や、近い将来の就職活動を見据えて、これから伸ばすべき自分の強み(または克服すべき弱み)を見極める段階から真剣に行うべきです。
自分はどんな仕事で何を成し遂げたいのか、就職先候補を検討する段階や、近い将来の就職活動を見据えて、これから伸ばすべき自分の強み(または克服すべき弱み)を見極める段階から真剣に行うべきです。
現実には、面接での受け答えの準備として「自己分析」を行っているケースが多く見られます。
面接試験に臨むにあたっての意識には、以下の4つのレベルがあります。
レベル1は、何も意識しない。記念受験や場数を踏むために、準備もせずに受けているだけのケースでしょう。厳しい面接官であれば、その態度を咎められるかもしれません。
レベル2は、自分本位の売り込みです。自分の強みは〇〇力だから、これをアピールする。面接官が黙って聞いてくれていても、内心、苦笑いしているかもしれません。
レベル3は、採用側のニーズを意識することです。「採用側はこういう人材を求めているはず」「これが評価されるはず」と意識することです。ただし、これは他者から伝え聞いた限られた情報から、受験生本人が受け取った範囲ですので、十分な理解とは言えません。
レベル4は、新入職員を迎える採用側と同じ視点を持つことです。もっとも、この段階の視点は、都庁に身を置いて、議会、都民、上司などに揉まれる中で、ようやく身に付いてくるものですので、都庁の採用試験をこれから受ける方にとっては、あくまでも理想像です。
レベル4を例えるなら、都庁の若手の中で高評価を受けている職員が、(仮に)採用試験の受験生の立場で面接試験を受け、普段の行動や心掛けていることを語れば、それは当然高く評価されるだろうということです。まさにこういう人材を採りたい、という評価になるはずです。
稀にですが、職員の評価の志向が都庁と似ている自治体の職員が、転職者として都庁の採用試験を受けるケースもあります。この場合は、職歴にもよるでしょうが、レベル4に近い視点を持って採用試験に臨んでいることでしょう。
ほとんどの受験生はレベル3以下の視点で準備を行い、面接本番に臨んでいます。
都庁の経験者から話を聞ける機会や、インターンへの参加など、レベル4の情報に接する機会を活用し、組織で優秀と評価されている職員が日ごろから何を考え、どう行動しているかなど、努力すべき方向性をぜひ掴んでおきましょう。(都庁に入りたいという本当の熱意、積極性、行動力が表れるところでもあります)
こうした視点を把握することは、面接での受け答えの準備をする際にも効果的ですが、早い段階から活動・行動の指針として活用するほうが一層大きな効果を見込めます。面接試験は、受験生の個別の回答に得点を付けているのではなく、「人物の審査」だからです。資格試験の口頭試問とは異なります。
「上手く答えたら合格」ではなく、「組織が求める人材であることが確認できたら合格」です。
「上手く答えたら合格」ではなく、「組織が求める人材であることが確認できたら合格」です。
受験生自身が(採用試験の時点で)レベル4に到達するのは無理だとしても、例えばレベル3.5の視点を持っていれば、伝聞だけの情報でレベル3以下に留まっている受験生に比べて非常に有利な立場となります。
実際問題として、レベル4相当の話を聞くことができる人が身近にいるか否かという運の要素はあります。
もっとも、そこで仕方がないと諦める人材か、何か打開策はないかと行動を起こす人材かも、「人物審査」においては勝負のうちです。