都庁オリンピック・パラリンピック準備局への配属

都庁では、これまで十数年間にわたり、庁内人材の効率的な活用と、職員の意欲向上を目的として、「庁内公募制人事」が行われてきました。

入都後最初の配属先については、数百名の新人を一挙に配属するのですから、全ての新人を希望通りの部署にというわけにいきません。

組織側の人員補充の都合もありますし、長期的な人材育成の観点で、(たとえ本人は積極的に希望していなくても)経験させておきたい業務もあります。

希望の部署で働く機会が自然に回ってくるとは限りません。そこで、特定の資格や能力を活用できる仕事に携わりたい場合、ピンポイントで異動したい部署がある場合、「庁内公募制人事」は有力な選択肢です。

平成28年度も法務、会計、IT、国際関連業務など、72の公募職務が提示されています。各職務の募集人数は1名~40名と幅がありますが、その多くは数名(若干名)となっています。適材がいれば、多少は多めに採っても構わないというスタンスです。


平成26年度から「東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催準備」の枠が設けられ、平成28年度も募集が継続されています。(現時点では、公募対象は事務職のみ)
書類選考、面接に合格すると、オリ・パラ準備局へ配属、または大会組織委員会へ派遣されるというものです。

通常の人事異動では、本人の側で希望を出すことはできますが、基本的に人事当局まかせです。公募制人事の場合は、自ら手を挙げて、書類選考、面接を突破すれば、事前に提示された部署への異動が決定します。ある意味で、転職活動を行うようなものです。

実際に、都庁のような大規模組織で局をまたいで異動すると、周りの顔ぶれも変わり、職場の雰囲気や仕事の進め方も異なるため、別の組織であるかのように感じます。

公募制人事の申込み資格は入都2年目からです。合格すれば、最短で入都3年目の4月に配属となります。

オリンピック関連で若手でも申し込みが可能(職級不問)な枠は、「関係団体との連絡・調整や計画の策定、広報・報道対応」の業務内容で、昨年度から10名拡大した40名程度募集されています。当該部署の陣容を徐々に拡大しているようです。

実務経験は不問ですが、選考の要件として、行動力、協調性、チャレンジ精神、柔軟な発想、積極性などが挙げられています。

こうした能力や素養は、採用試験案内でも都が求める人材像として掲げられていますが、採用活動のための単なるお題目ではなく、実際に都庁職員にも要求されている能力です。

また、採用試験の面接同様、「自分には行動力があります」「希望部署に異動できたら心機一転で頑張ります」と主張するだけではダメで、現在の状況下でどのように行動力などを発揮しているかが問われます。

確かに、今できていなくても、環境が変われば、将来できるようになる可能性はあります。もっとも、既にある程度は実践できている人材(実践しようと努めている人材)のほうが、採用する側としては安心です。

なお、当該募集区分では、「部署により英語によるコミュニケーションが頻繁に発生する」ため、「外国語(主として英語)のスコアは問わない。ただし、前向きに語学の習得に取り組める者が望ましい」とあります。

平成26年度は一定の語学力を有することが要件に含まれていましたが、27年度からは語学以外にも強みを持つ多様な人材を確保する趣旨で、語学の要件は外されています。

もっとも、部署の性質上、(自分が直接の担当者でなくても)英語での対応が必要となる場面もありうるため、語学習得の意欲は問われています。
例えば、来訪者や海外からの電話があった際、他に対応できる者がその場にいなければ、ひとまず自分が用件を伺うといったケースです。そうした場面に備えて、積極的に語学力を伸ばす意欲のある人材、あるいは応対に必要な英語メモを手元に準備しておくといった工夫のできる人材が求められています。

なお、「海外関係機関との調整・交渉」を行う部署の募集枠については、主任または課長代理の職位にあることに加えて、一定の語学力、海外関係機関との連絡調整業務の経験があることなど、実務経験が要件とされています。

なかでも、国際関係業務において高度な職務遂行能力を備えた人材を育成するため、海外研修(アメリカの大学、4か月間)が含まれる区分については、「勤務成績が優秀」、「将来管理職として勤務する意向を有していること」が要件となっています。

人事当局として、国際関連業務に強みを持つ幹部候補として育成する意向が示されています。もっとも、これは出世の保証ではなく、最終的には自分の力で管理職試験に合格する必要があります。(幹部候補の育成にふさわしい部署に配属される点で有利と言えますが)

以上のように、実務経験不問の募集枠もありますが、一方で、難易度の高い職務など、一定の職位、勤務成績、実務経験が問われるものもあります。

審査する側としては、通常、その人材と一緒に仕事をしたことがないため、判断材料も限定されます。特定の資格や実務経験が不問の場合は、庁内一律の評価基準として勤務成績の履歴が決め手となることもあるでしょう。

勤務成績については、毎年の履歴が積み重なると、短期間で挽回するのは困難です。これから都庁に入る方は、キャリアの早い段階から真剣に捉える必要があります。

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