公務員試験の競争倍率低下と公務員の将来性

近年は民間企業の志望者が増加し、その影響で公務員試験の受験者数が低下傾向です。

将来の人口減少や経済規模の縮小、財政の悪化を懸念して、公務員を目指すことに迷いがある方もいるかもしれません。公務員は将来も安定した職業であり続けるかという問題です。

多様な産業を擁する大都市に関しては、公務員と民間で将来の安定性に大差が生じるとは思えません。

民間セクターに活力がある限り、一定の税収水準は維持され、財政状況も極端に悪化することはありません。民間の平均準拠で定められる公務員の処遇も同様です。

民間セクターが活力を失った場合は、公的セクターも税収減、財政悪化となり、公務員の処遇も切り下がるでしょう。ただし、この場合は、公務員だから危ないというわけではなく、社会全般の問題と言えます。

一方で、民間セクターには問題がなかったとしても、公的セクターが先に財政破綻するケースも考えられますが、公共投資・消費の減少など、いずれ民間セクターにも相応の影響が及びます。(東京都に関しては、このシナリオのリスクは低いと考えますが)

民間・公的セクターどちらに問題が生じても、ある意味で一蓮托生です。

就職先の選択に関しては、公務員と民間の選択というよりは、個々の職員がその組織の中でどのような立ち位置を確立するかのほうが大切です。

近年は公務員よりも民間企業を志望する方が増えています。やりたい仕事を基準に選択しているなら問題ありませんが、現在就職しやすいから、公務員の将来が不安だからという理由だけでは、心もとないです。

大企業とはいえ、国内の人口減少、経済規模の縮小の影響は避けられません。海外市場に打って出る場合は、国際企業や地元企業との競争があります。
さらに、個人として、そうした企業活動の戦力として認識されるための、社内でのポジション確立も必要です。

公務員のほうが絶対に安全とは言えませんが、一方で、公務員のほうが民間より極端に悪くなるという可能性も低いでしょう。仮に悪くなるとすれば、同じように悪くなると思われます。

景気が悪くなり、一定の人員整理が必要という時でも、難易度の高い職務に就いている人材、高度な専門性を有する人材は、クビになりにくく、給料も下がりにくいものです。

つまり、景気が良いから民間に、景気が悪いから公務員にといった基準ではなく、中長期の生活設計、キャリア形成の面では、自分がより関心を持てる、より熱心に取り組めそうな仕事を基準に志望先を選び、いわばその道の第一人者、専門家として生き残ることを目指すほうが得策です。

それでも10年後、20年後、自分が30代、40代になったときの経済・財政状況が心配な方は、仮に給与が3割カットされたとしても、直ちに生活に困ることはない給与水準となるポジションを目指すべきです。都庁で言えば、課長代理から課長級が目安でしょうか。
一方で、若手職員でも代替できる職務を行っているベテラン層は、厳しいことになるかもしれません。

万一、それより早い時期に財政破綻のような大惨事に陥ったとしても、もともと給与水準が低く(カットの金額も少ないと思われる)、将来のポテンシャルもある(人員整理の対象になりにくい)若手職員はそれほど心配する必要はありません。
財政再建の期間が長期に及べば、その間、若手の昇給も凍結されるなど影響を受けるかもしれません。もっとも、都庁でさえそうした状況に追い込まれるとすれば、社会全体が相当な経済的ダメージを受けているはずであり、毎月給料を受け取れること自体が恵まれていると認識されるかもしれません。

また、中長期のキャリア形成に関して述べると、近年、民間企業が採用を活発化させていますが、これは裏を返せば、同年代の社員数が増えるということです。将来、組織内での同年代のポジション争いが激しくなる(もしくは、一定数が組織を去る)ということでもあります。

就職後の中長期的なスパンで考えれば、今注目されている、人気だ、採用されやすい、(当面の)給料が高いといったことよりも、まずは得意なこと、関心のあることを軸として選ぶべきです。
一方で、あまり関心の持てないことに関して、人一倍頑張り続けるのは困難です。言われたことだけを渋々やるという状況では、いくら能力が高くても、高いパフォーマンスを維持するのは難しいのではないでしょうか。

都庁には、若手のうちは明確な出世コースはありませんが、最初の5年程度のうちに大まかな進路は分かれます。将来の処遇が気になる方は、まずはその流れに乗れるようにするのが得策です。時期が後になるほど、挽回するために年月がかかります。

ところで、AI(人工知能)による労働力の置き換えが議論されることもあります。

公的セクターにおいては、テクノロジー導入(ワープロ、パソコン、携帯電話、インターネットなど)の過去の実績から考えても、幸か不幸か、AIの導入もかなり遅れるでしょう。

仮に労働力がAIに置き換えられるとしても、民間セクターより後ではないでしょうか。公的セクターの勤労者にとっては、雇用が守られるという側面もあります。

これから都庁に入る若手の方にとっては、民間セクターで何が起きているかウォッチしていれば、AIの到来に備えて必要なスキル・経験を身に付ける時間は十分にあると思います。また、仮に置き換え(リストラ)が進むとしても、給与が比較的高いベテラン層が先に対象になると考えられます。

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