合格するには、予備校に通わないとダメか

都庁が第一志望だ、今回の受験でぜひ受かりたいという方の場合、結論から言うと、予備校に通える時間と資金の余裕があるなら、利用したほうがよいでしょう。

独学と比べ、予備校には主に以下のメリットがあります。このため、実力者は合格がより確実となり、一歩及ばないレベルの方は合格ラインに乗る可能性が高まると考えられます。

 ・ 専門記述・論文の答案、面接の受け答え(態度も含む)を第三者の目で見てもらい、改善点の指摘を受ける
 ・ 面接の場馴れ
 ・ 受験勉強のペース管理、モチベーション維持

これらを独学で行う場合、予備校に代わる手段や相手を自分で見つける必要があります。または、論文の記述内容や面接の受け答えを、自分で客観視しながら改善できる相応の実力が求められます。

また、完全に独学で、添削も模擬面接も一切受けないというケースでは、「なぜ他人に見てもらわなくても大丈夫だと考えたのか」「他人の意見を聞いてみようとは思わなかったのか」という点を面接官が気にするおそれがあります。

意地悪な質問に聞こえるかもしれませんが、面接官としては、職場でも同様の行動を取ることがないか検証する必要があるのです。

資格試験では、試験で一定の結果さえ出せば合格です。どのように学習したかなど、プロセスは問われません。

一方、採用試験は、これから一緒に働く仲間の選抜です。知識、能力の側面だけでなく、積極的にチームに貢献してくれそうな人材かどうか、行動様式・思考様式も検証されます。

なお、何を「貢献」とみなすか、何を重視するかは、組織によって幅があります。就職活動における業界研究については、商品やサービスに関する知識よりも、その組織がどのような人材を求めているか、どのような人材が実際にその組織で活躍しているかを深く掘り下げるべきです。


もっとも、予備校に通うことだけに時間と労力を使うべきではありません。

当ブログ記事 「採用面接の評価基準」でも紹介しましたが、採用試験で試されるのは、チームで働くことができるか、論理的に考えることができるか、課題解決に向けて自主的に行動することができるか、といったことです。

予備校で黙って講義を聞いていたり、単に論文の添削を受けるだけでは、これらの能力の向上や、実践経験の積み上げにつながりません。

予備校を便利に活用するのは構いませんが、受け身で頼り切ってはダメです。公務員試験は資格試験ではなく、これからチームで一緒に働く人材の選抜試験です。就職してからも上司や先輩に頼ってばかりになるのではと受け取られると、採用に向けて積極的に推薦してもらうのは難しいです。

せっかく予備校に通うのなら、受験生仲間と自主的な受験対策グループを立ち上げるなど、他人とチームで何かを成し遂げる活動に取り組むこともできます。

予備校の場に限らず、学生の本分である勉学やゼミ、あるいは部活・サークル、アルバイトなどの場面で、課題を発見したり、意見の異なる相手を説得したり、論理的に考える力を身につける、といった実戦練習が大切です。 

結局、論文や面接ではこうした能力(基礎力)が試されています。予備校は、そうした能力や経験を、的確に論文の形にまとめたり、説得力を持って面接官に伝えるためのコツを習得・練習する場であると考えるべきです。

予備校に通わず、独学で合格に至ることももちろん可能です。
もっとも、都庁が第一志望だ、絶対に今年受かりたい、という思いで受験をするのであれば、文章を書き慣れている人に論文を見てもらったり、社会人経験のある人に面接の練習をさせてもらうべきです。

例えば、マーケティング、広報、報告書作成に携わっている方であれば、日常的に読み手(顧客や上司、ライバル)の批評にさらされています。読み手を意識した文章構成、焦点の当て方について有益なアドバイスをもらえるはずです。

採用試験の論文は、学術論文ではありません。「業務で政策提案の報告書作成を依頼したとしたら、どのような成果物が上がってくるか」という実務的な視点で見ています。

いくら高尚な文章が書いてあったとしても、依頼者のオーダーや関心事項に焦点が当たっていなければ、評価されません。

都庁の論文試験に関しては、問題文の指示や、複数提示された資料の関連性に的確に応えるということです。

例えば、提示された資料からは、複数の課題を読み取ることができ、それに対する解決策はいくつでも提案できるかもしれません。もっとも、「五輪開催を控える東京が」や「少子高齢化が進展する東京において」といった記述が問題文にある場合は、その指示にマッチするものに絞って提示しなければいけません。

自分の回答を他人に見られるのは恥ずかしいかもしれませんが、自分では気づくことのできない癖や、改善すべきポイントを指摘してもらえるはずです。
 (就職後、仕事を進めるにあたっても、必要に応じて他人の助力を求めることは大切です)

実際の職場でもよくありますが、周りくどい説明、要点が分かりにくい文章・資料などは、ある種その人の癖のようなものです。上司に指摘されたとしてもすぐに治るものではありません。

気を付けていても改善には一定の時間がかかります。誰かに指摘されないと本人は全く気づいていないことも珍しくありません。

こうした点で、予備校に通っている方は、論文添削、模擬面接を通じて、講師からの指摘や他の受験生との比較によって、自分の弱点に気付く機会も多いでしょう。また、改善のヒントがもらえるため、完全に独学で臨んでいる受験生と比べて有利になると考えられます。

また、予備校で、「この問題には、こう答えるべき」ということを教わるかもしれませんが、なぜそう答えるべきかまで理解する必要があります。見たことのない問題が出題された場合でも応用が利くようにするためです。 

出題傾向が変わったり、見たことのない問題に遭遇すると、自分が事前に用意していた論文や回答に無理に引き付けてしまい、自滅する受験生は多いものです。これは都庁内の昇任試験の場合でもよく耳にすることです。 

事前に暗記した答えを単に再現するだけの人材は求められていないのであり、自分がそういう人材であることを答案や面接であえて示す必要はありません。

採用試験案内にも、「東京は、時代変化の影響が最も早く、かつ、集中的に現れる現場」、「東京都職員は、日本の未来を切り拓くフロントランナーであることが期待されています」とあります。

都政全体の大きな話でなくても、入都後、未経験の業務で、何から手をつければよいか分からないような仕事を上司から依頼されることもあります。また、別の部署へ異動すれば、ほとんど知識がない状態で当面の業務を切り盛りする必要に迫られます。

採用試験の論文・面接でも、単なる知識が試されているのではないと割り切って、自分なりに考え、論理的に答えを導き出せる受験生が、他の受験生が自滅する中で、「粗削りだか、見どころがある」「伸びしろが感じられる」と高い評価を得ることができます。

「準備していないテーマが出題されたから書けなかった」「聞かれたことのない質問をされたから答えられなかった」というのは残念ながら言い訳になりません。

むしろ、その場で考えざるを得ないように出題の切り口が工夫されています。テーマ自体は平凡でも、何をどのように答えさせるかという点で出題者の工夫が見られます。
そのような状況で、自分なりに考え、何とか乗り越えようとする姿勢を見せることも勝負のうちです。

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