来年度の受験生が今から意識すべきこと(其の2)

<其の1からの続き>
完璧な状況でなくても、行動の開始を
次に、第二点目、「先延ばし」をしないことです。

論文、面接に関しては、直前期に磨きをかけることで、実力を60から80に伸ばすことはできます。しかし、短期間で4080にはできません。

採用当局としても、一発勝負でそういうことが起こらないよう、本来の実力が表れやすいように、出題形式や質問の内容を工夫しています。

論文や面接で評価される思考様式、行動様式を身に付けるにはある程度の時間がかかります。例えば、面接の直前期に始めたようなことは、面接のネタ作りだろうと思われて評価されません。

自分の人材像を成長させるためのプロジェクトと捉えて、早めに、計画的に取り掛かりましょう。

また、民間企業の採用活動時期に関して、見直すべきとの意見も出ており、都庁の採用試験も従来どおり(1か月前倒し)となる可能性もあります。

知識系科目の準備に関しては、筆記試験の時期が昨年度より早まることも想定して進めておくべきです。結果的に昨年度と同じ時期になれば、復習の時間も十分に確保することができます。

「何月以降になったら、一日8時間以上かけて頑張る。だから今はやらなくても大丈夫」という発想も危ういです。

今までやっていなかったことを、急に毎日、何時間も集中力を保って続けるのは、並大抵のことではありません。おそらく、本来の開始予定日が来ても、「最初は慣らしでいいか」となってしまう可能性が高いでしょう。

例えば、試しに一日8時間の勉強をやってみる。その結果、6時間が限度だと感じるなら、その分、本格的に受験勉強に取り掛かる時期を早めなくてはいけません。

準備期間が足りなくて択一、専門記述の準備が十分できなかったというのは、本当に惜しいことです。「あと一か月でも早く始めていれば」と悔やんでも、時間は戻りません。

昔から宿題は最後にまとめてやるほうだったという方は要注意です。特に、今まではうまく切り抜けてきたという場合、「今回も大丈夫だろう」となりがちですので、さらに注意が必要です。

いずれにせよ、組織に入れば、締め切りギリギリでの報告や課題提出を上司は嫌います。早めに一度提出し、上司のフィードバックも踏まえて、期日までに完成度をさらに高めるのが望ましい行動です。
採用試験における人物の評価も同様です。今のうちから、早め早めの習慣に切り替えるのに越したことはありません。

ヤル気、体調、環境が整ったら始めようと思っても、全てが完璧に揃うことはまずありません。
状況が完璧になるのを待って1か月、2か月が過ぎ去ったころには、不完全な状況でも少しずつ取り掛かっていた受験生のほうがだいぶリードしているでしょう。

今日、面倒だと思うことは、明日になっても面倒なものです。最初は分からないことだらけで、はかどらずイライラするかもしれませんが、少しずつ知識が身に付くうちに、苦手意識も薄まり、得意科目となっていきます。

理想的ではない、邪魔が入るような状況下で、着実に前に進むことも勝負のうちです。
就職後も、自分の仕事だけに集中できるということはありません。不意に電話がかかってきたり、訪問者があったり、新しい仕事を頼まれたりと、取り掛かっている業務を中断されることは頻繁にあります。

もっとも、頑張ろうという気持ちだけで続けるのはなかなか困難です。小さなことでも先延ばし癖を克服するたびに、自分に何かご褒美をあげるような仕組みを考えるのもいいでしょう。

スロースターターで取り掛かりに時間を要する方の場合、コーヒーを飲んで勢いを付けてから勉強を始める、ネットニュースを見てから取り掛かるという順序ではなく、まず決められた時間が来たら1時間勉強し、その後でご褒美としてコーヒーを飲む、ネットを見るという習慣に変えるのもお勧めです。一旦勢いがつけば、続けるのは苦でないことも多いです。

専門科目など知識を身に付ける必要があるものは、まずは走り始めることが大切です。それと並行して、ペース確認、向かっている方向の確認も大切です。

採用試験本番までに何をどの程度まで達成する必要があるのか(これと決めた演習本を何回繰り返すかなど)を知ること、そして、そのためのスケジュール観を把握することも合わせて行いましょう。

限られた時間で、最大の効果を生み出す
第三に、「自分の時間」に有効な投資を行うことです。
限られた時間で最大限の結果を生むためには、時間に投資する視点も必要です。

独学で上手くいっているなら構いませんが、受験参考書や予備校などをうまく活用すれば、短期間でノウハウや知識を得ることも可能です。

筆記試験を通過しないと、どんなに潜在能力を持った人材でも、面接の機会が与えられません。筆記試験対策は堅実に進めてください。

もっとも、限られた時間を単純に割り振ればよいわけではありません。

択一、専門記述に関しては、広範囲な知識が必要となりますので、対策には時間はかかるでしょう。
一方、目指すべき到達点が分かりやすいことから、時間をかけてやればやるほど報われると言えます。ただし、実力は少しずつしか伸びません。

論文、面接に関しては、時間よりも、視点、取り組み方が大切です。誤った方向に努力しても、全く評価されません。逆に、適切な方針を押さえていれば、最小限の時間で、大きく実力を伸ばすことができます。

論文、面接の実力に関しては、少しずつ良くなるというよりも、いわゆる「コツ」をつかむことで、1段階、2段階良くなるということが起きます。

本気で最終合格までを狙うのであれば、筆記だけでなく、面接を突破しなければなりません。そこまで見据えるのであれば、机に向かう勉強だけでは不足です。

都庁の仕事は、一人で机に向かうだけではありません。したがって、面接官も、机に向かうこと以外の場面での適性も検証します。

知識やテクニック以外の、普段の活動や行動様式などについても指導してくれるゼミ、予備校に通っているのであれば、そうしたリソースを有効に活用してください。

なお、独学の方は方向性がズレたり、独善的になっていないか、予備校に通っている方はそれに頼り切っていないか、指示されたことをこなすだけになっていないか、一歩引いて見直す機会を設けて下さい。どちらも採用側から見て好ましい行動様式(人材像)ではありません。

時間に投資するという視点は、就職後にもあてはまります。半年、一年といった限られた期間での成果や成長が求められるからです。

都庁でも、仕事のために自分のお金や時間を使いたくないというタイプもいるのですが、節約しているように見えて、長い目で見れば結局は損をしています。

例えば、ビジネス書を2、3冊買って学んだことを日々実践し、標準より上の勤務評価を得た場合、昇給差額の2か月分だけで十分もとが取れます。それ以降の月給とボーナスの差額は、いわば投資から得た利益です。そして翌年度以降も、標準より高い地点から、さらに昇給が積み重ねられていきます。

また、希望していた仕事に携わることなど、お金には換算できないことにも関わります。自ら貪欲に勉強している人、成長しようともがいている人でないと、より難易度の高い仕事に携わるチャンスも与えられません。

自分の時間に投資し、自分の能力、スキルを高めようとしているか否かは、様々な受け答えを通じて面接官にも伝わります。

就職試験を突破するためというより、就職後に仕事で活躍することまで見据えて日々努力している人材は、採用側としては魅力的です。就職後も、目的意識を持ち、自主的にスキル、能力を高めていける人材と見込まれるからです。

一方、「今は学生だからやっていないが、就職したらやるつもりだ」と言う受験生もいます。しかしこれは、「仕事だから、仕方なくやる」「誰かに指示されなけばやらない」と言っているようなものです。

受験生が「面接試験は難しい」「何が評価されているのか分からない」と感じるのは、受験生の受け答えや過去の行動が、受験生側の論理ではなく、採用側の論理(視点)で解釈され、評価されることが要因です。

この論理(視点)のギャップが少ない受験生ほど有利になるのは、言うまでもありません。
このギャップを埋めることは、面接の直前期に回答を上手く整理するために役立ちますが、早い時期から様々な活動に取り組む際の視点として活用するほうが一層効果的です。

都庁では、採用順位や、いわゆる大学のランクにかかわらず、キャリア逆転のチャンスが大いにあります。
都庁の採用は、中央省庁に例えれば、総合職と一般職を一つの枠で採用しているようなものです。将来、全庁的な仕事や政策立案に携わるチャンスは、新人全員に開かれています。しかし一方で、そうした機会が全員に順番に回ってくるということはありません。

政策立案やスケールの大きな仕事に携わりたいという思いで都庁を志望するなら、そうした職務に抜擢されている若手職員の特性を今のうちから把握しておいて損はありません。
これは採用当局が優先的に採用したいと考えている人材像にも通じます。


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