明暗を分ける、都庁若手とベテランの長期給与見通し

都庁職員の給与水準に関して、近年の改正の方向性、民間企業の動向を踏まえると、中長期的には以下のようになると考えられます。

若手職員
 ・ 主任以下…やや増
 ・ 課長・課長代理…増

ベテラン職員
 ・ 主任以下…大幅減
 ・ 課長・課長代理…やや減

従来から、管理職の志望者が少ないことに対して、都人事当局も問題意識を持っています。もっとも、出世を望まない人が増加しているのは都庁に限らず、社会一般の傾向のようです。
課長、課長代理(旧課長補佐・係長)の給与については、ベテラン層でもそれほど下げることはないでしょう。

一方で、若手の課長・課長代理の給与については、管理職志望者を増やすインセンティブ、勤続年数ではなく職責に対して給与を支給、の二つの側面で、現行水準より増加していくはずです。

なお、部長級以上については、ポストに応じた給与体系に整理されたため、勤続年数(年齢)は関係がなくなっています。財政事情等を考えると、少なくとも増やすことはできませんので、当面は、現状維持でしょう。


若手、ベテランの給与水準の変化は、急に切り換わるのではなく、毎年の給料表の改定などの際に、徐々に行われます。

給与改定の背景として、生活給から職務給への流れがあります。つまり、組織が構成員の生活の面倒を見るという発想から、仕事で果たしている成果・責任に対して報酬を支払うという発想への変化です。

生活給の発想では、仕事自体の難易度や業績とは関係なく、40代、50代は子どもの教育費などで出費がかさむだろうから給料も多めに支給する、一方で20代はそんなに給料がなくても生活していけるだろう、という考え方です。

もっとも、生活保障のためとは公式には言えませんので、勤続年数が増えるにしたがい能力が向上すると見なして、基本的に毎年給与が上がっていく仕組みとなっています。

そして、ベテラン層に多めに配分するためには、若手の分を削るしかありません。

ある意味では、これで上手く回ってきました。若手も、いつかは自分も多くもらえるなら、若いうちは我慢すればいいと考えられたからです。

しかし、若いうちの給料は本来の実力以下に抑えられ、しかも将来上がる保証もなくなると、異を唱える人も増えます。

また、現代ではライフスタイル、家族構成も多様化し、40代、50代なら家族の扶養、教育費でお金がかかるとは必ずしも言えません。

ベテラン職員の給与がどのように削減されるかですが、近年の都庁での改正歴を考えると以下のようなシナリオが想定されます。

まず、物価については、なかなか困難とは思いますが、政府・日銀の目指すように年2%上がるとします。

給与も2%上げないと実質的にマイナスになりますから、給与総額(平均給与)は2%引き上げられます。

そのとき、民間に比べて高いとされるベテラン層の給料はそのまま2%は上げてもらえません。せいぜい1%でしょう。額面では上がっているので、反対の声が小さくなりそうですが、実質的には1%のマイナスです。

一方で、民間より低めに抑えられているとされる若手は額面3%の上昇で、実質でもプラス1%となります。

想定される当局の見解としては、「厳しい財政状況の下、職員の意欲、能力を最大限に引き出し、効率的な行政運営を行うためには、限られた給与原資の分配にあたり、メリハリを付ける必要がある」といったところです。

単年では大した変化ではありませんが、これが毎年、20年間行われると、スタート時点と比べて、ベテラン層の実質的な給料水準は18.2%カット、若手は22%増となります。

現在、同内容の業務に従事しているベテラン層が年収800万円、若手が年収500万円だと想定します。

先の数値をあてはめると、20年後は、それぞれ額面(名目値)で976万円、903万円となります。

ただし、この間、物価は1.49倍になっていますので、現在の物価水準でいうと、それぞれ654万円、610万円に相当します。

ベテラン層での給与削減、若手の給与底上げにより、同一職務・同一賃金の職務給制が、かなりの程度、達成されている状況です。

日本の社会では、物価が上がり続けるという状況を長い間、経験していません。見た目の給料は増え続けているということで、それほど強い反発を呼び起こすことなく、実質的な給与水準の切り崩しが進んでいくかもしれません。

上記の方向に徐々に進んでいくと仮定すると、これから入る方は、当面は若手サイドですから、しばらくは賃金上昇の恩恵を受けられます。しかし、必ずある時点で、自分が中堅層、さらにはベテラン層のサイドに移る時がきます。

その時は、勤続年数相応に役職が上がり、それに応じて給与も上がる職員と、そうでない職員との差が大きく開くこととなります。

都人事委員会の勧告でも今後の課題として、以下の点が挙げられています。
(1) 職務給の更なる進展
(2) 能力・業績を反映した給与制度の更なる進展
(3) 高齢期雇用の動向等を見据えた世代間の給与配分のあり方
(4) 生活給的、年功的要素の抑制

役所が組織として明示した以上は、議会やマスコミにも進捗状況を問われますから、軽々しくやっぱり止めますとはなりません。こうした方向での改正が既定路線です。

こうした改正が進めば、都庁に入れば誰でもそれなりの生活水準が保証されるとは必ずしも言えません。以前のように、「自分はずっとヒラでいいんだ」「昇任試験なんて興味ない」と軽々しくは言えなくなります。

採用試験の受験を検討されている方は、都の方針が、ご自身のキャリア観、将来設計とマッチしているか、10年後、20年後の状況も踏まえてぜひ検証してみてください。

ところで、都庁は、自治体の中では率先してこうした方向に舵を切っていますが、他の自治体も、財政事情や国からの圧力を考えれば、遅かれ早かれこうした方向に進まざるを得ません。

規模や地域の割に給与水準が高い自治体は、これから是正が進みます。公務員試験受験生の間で今の時点で「お得」だとか「狙い目」と言われる自治体を考えている方は要注意です。

「地方自治」の建前もあり、国もあまり強硬な手段は取りたくありません。今のところは取組の悪いところを公表し、改善を促すという間接的な強制に留めています。

それでも進まない場合、最終的には、国が「適切」と考える人件費総額に応じて、国から自治体に流れている地方交付税交付金を減額することになると考えられます。

この場合、当該自治体が相対的に高い給与水準をそのまま保つには、①住民を説得して増税を行う、②行政サービスの質・量をカットし人件費を捻出する、のどちらかしかありません。

どちらも政治的に極めてハードルが高く、非現実的です。首長や議会は、職員の給与カットを選ぶでしょう。

取り組むのが遅い組織ほど、切羽詰ってから急激に変化せざるをえなくなり、職員の暮らしにも衝撃を与えることとなります。

都庁は自治体のトップランナーと言われますが、これは都庁の取組がトレンドセッターとなり、いずれ他の自治体で導入されるケースも多いためです。

都庁に限らず公務員の採用試験を検討している方は、こうした都庁の動向も押さえておくことをお勧めします。

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