都人事委員会勧告に見る、都庁で求められる人材

「平成26年 人事委員会勧告」から、採用試験の段階で受験生が注意すべき点を抽出しました。
要点は以下の3つです。当記事の後段に解説を加えています。

・公務員だからといって競争を避けるのは、人事当局の意向に反する
・人材育成は、自らがキャリアパスを描き、その実現に向けて主体的に取り組むもの
・専門性(強み)を軸に据えて、都庁でどんなコースを歩みたいのか自分なりに考える

競争を避けてはならない
以下は昇給制度の見直しに関する同勧告の抜粋です。

「能力・業績の適切な給与への反映という観点から、職員の業績や能力の発揮状況を適切に反映できる昇給区分へと見直していくことが必要である。
また、この見直しを踏まえ、職員の能力・業績をよりきめ細かく給与に反映する観点から、今後の昇給制度のあり方について、検討していく必要がある。」

「能力の発揮状況」とあるように、「潜在能力」や「頭の良さ」自体が評価されるわけではありません。自分の強みを把握し、実際にどう発揮してきたかが問われます。

受験生の場合も、「仕事に就いてから頑張る」は認められません。「希望する部署に異動できたらやる」「主任になったらやる」と就職後も先延ばしになるおそれが高いからです。

また、昇給制度の改正には、昇給をモチベーションの一つとして、職員の意欲を高めたいとの人事当局の意向が伺えます。

つまり、これまで以上に職員に切磋琢磨してほしいという趣旨であり、人事当局としては、競争を忌避する人材は望んでいないということです。

なお、勧告の言う「職員の能力・業績をよりきめ細かく給与に反映する」ことによって、現状と比べ、若手の給料は上がり、ベテランの給料は下がることとなるでしょう。

例えば、出先事務所では、新人から担当係長までが、ほとんど同じ業務に携わっていることがあります。そして、業務内容、成果がほとんど同じでも、若手は年収400万円で、ベテランは年収800万円というケースもあります。

このような勤続年数による給与格差が縮まり、職務内容、成果が同じなら給与も同じという制度に少しずつ変化していきそうです。

とはいえ、欧米並みの職務給制度を指向するとしても、完全に移行するまでには、(財政破綻などのショックがなければ)公務員の世界では20年、30年の時間がかかるでしょう。

キャリアパスは自分で拓く
以下は人材育成への取組に関する同勧告の抜粋です。

「人材育成は、職員自らがキャリアパスを描き、その実現に向けた主体的な取組を組織全体で支援していくことが重要である。こうした観点から、OJT、Off-JT、自己啓発支援などの取組を一層効果的に運用していくとともに、専門性を向上させる配置管理を行っていくことが求められる。」

「職員自らが」「主体的な」とあるように、組織が自分を育ててくれるといった受動的な姿勢は評価されません。組織のリソースを活用しながらも、自分の力で成長するという意欲が求められています。

「指示されないと動かない人材」と「言わなくても自主的にやってくれる人材」のどちらが組織では重宝されるかということです。

もちろん、組織に入ってからでないと見えてこない事柄もありますが、採用試験から数か月後には職業キャリアを歩み始めるのですから、面接試験の時点で、自分の歩みたいキャリアパスがある程度は思い描けていないといけません。

「合格してから考える」では、面接官としては疑問を抱かざるをえません。

「就職後どのような道を歩みたいか」、「それは都庁で可能か」を検討することなく、なぜ都庁を志望しているのか。

この点が不明確であれば、「第一志望」と主張しても相手に響くことはありません。他の動機(安定、給料、ブランド)で志望していると勘繰られることになります。

また、「専門性を向上させる配置管理を行っていくことが求められる」とあります。

専門性に関しては、大学で専攻したことの上に築くのが手っ取り早いですが、必ずしも大学で専攻した分野でなくてもよく、仕事をしているうちに変わっていくこともあるでしょう。

しかし、面接の段階で、自分の強みは何か、仕事に就いたらどう生かすつもりかなど、自分なりに専門性を発揮し、さらに高める意欲が見えないといけません。

都庁は確かにフィールドが広いですが、「何でも屋」はあまり求められなくなっています。

単に「様々な部署を経験したい」というのはダメで、「どこでもいい」と言っているのと変わりません。

何ごとにせよ、こだわりや「これだけは負けない」といった思いがある人材は、就職後も自分なりの思いを持って、質の高い仕事をしてくれそうだと期待させます。

「都庁はフィールドが広いから志望した」「入ってからやりたいことを見つけたい」というのは残念な回答です。

結果的に様々な部署を渡り歩くことになるとしても、自分の強み、専門性をそれぞれの部署でどう活かしていくつもりか、また、どう磨いていくつもりかが問われます。

専門性を高める
以下は専門性を機軸に据えた「複線型人事制度」の構築に関する同勧告の抜粋です。

「今後の人事制度は、組織のマネジメントを司るゼネラリスト、現場や事業分野におけるスペシャリスト、更には特定分野を極めたプロフェッショナルといったフィールドごとに、職員一人ひとりが、採用から退職・再任用に至る時々で、専門性を高めながら、組織に最大限貢献していくことのできるものとする必要がある。」

人事当局の言う「ゼネラリスト」とは、何でもできる事務屋ではなく、組織マネジメントを司る役割ということです。
典型的には、個別の組織を運営する管理職(課長以上)、組織全体のマネジメントに関わる予算、人事を所管する部署の職員などが該当します。

「ゼネラリスト」としてキャリアを積み上げる場合も、組織運営、予算、人事などに関する専門性・実務経験を高める必要があるということです。

何でも万遍なくできるが、これといった強みもないという人材は、これからの組織の中では役割が小さくなってくるでしょう。

「複線型人事制度」とは、「ゼネラリスト」「スペシャリスト」「プロフェッショナル」のいずれのタイプでも、出世が可能で、それに応じて収入も増やせる道が開けている人事制度ということです。

現状では、事務系、技術系とも「ゼネラリスト」タイプでないと、ある程度以上の役職には出世しにくい構造です。これは「出世コース」に、本庁の総務課長、管理課長など、局務全般を見渡せるゼネラリストでないと務まりにくいポジションが組み込まれているためです。

これまでは「スペシャリスト」「プロフェッショナル」タイプの職員に役職で報いることはできなくても、(年功序列型の)給料面である程度は報いることができました。

将来は、役職と給料が比例する仕組みに変わっていきます。
優秀な人材の確保、職員のモチベーション向上のために、「スペシャリスト」「プロフェッショナル」タイプでも上級幹部になれる新たな人事制度が必要ということです。

また、「採用から退職・再任用に至る時々で、専門性を高めながら」と、ここでも専門性が言われているように、採用の段階でも専門性を高めていく意識が必要です。

「入都してから考える」「組織のほうで割り当ててくれれば従う」という消極的な姿勢では、面接官は心許ないと感じるでしょう。

確かに、自分の専門性を活かせる部署に配属される保証もなく、何年か勤務しているうちに自分の専門性が変わってくることもありえます。しかし、採用面接の段階では、今、自分が強みと考えている専門性を高めていく意欲は必要です。

もっとも、特定の学部を卒業した、単位を取得したというだけでは、専門性とまでは認められません。将来のキャリアパスを見据え、自分の強みとして磨いてきた実績と意欲が試されます。


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